2023-01-01から1年間の記事一覧

『夢の涯てまで』(構成・編集・監督:草野なつか)

stranger.jp 「私は広島に行ったが、何も見えなかった」字を書く手の速度に宿る逡巡を読み取るものかはさておき、「君は」ではなく「私は」であったと思う。映画は「広島」が主題として見られるだろうことから逃れようとはせず、そして広島の名は冒頭に綴ら…

『探偵マーロウ』『アル中女の肖像』『君たちはどう生きるか』

ニール・ジョーダンとリーアム・ニーソンの『探偵マーロウ』を見る。特に何も言う蘊蓄も思い浮かばないが、これは見て良かったんじゃないかなあ、と曖昧な感想しか言えないが、しかし探偵モノはやっぱり良い。ニール・ジョーダンも70歳過ぎてるのか。最近具…

『怪物』(是枝裕和)

是枝裕和の映画を見るのも今の日本を生きる人間のさだめと諦めて『怪物』。わかりやすい誇張とそれっぽさの塩梅。映画内の細部から作家自身の視点まで含めて曖昧さを残すが、そこから導き出されるのは多様性もクソもなく漠然と収まるべきところに収まった感…

『小説家の映画』(ホン・サンス)『インディ・ジョーンズと運命のダイアル』(ジェームズ・マンゴールド)

ホン・サンス『小説家の映画』を見る。小説家が主役の映画でもあり、小説家が映画を作る話でもあるが、いずれにせよ『小説家の映画』である。最初はもはや無の境地にでも達したような、何を見ているんだろうと置いていかれそうになるも、それでも序盤から映…

『Terra』(鈴木仁篤、ロサーナ・トーレス)

www.nfaj.go.jp www.athenee.net ↑「丘陵地帯」について 鈴木仁篤、ロサーナ・トレス インタビュー(聞き手:赤坂太輔) 国立映画アーカイブにて『Terra』(鈴木仁篤、ロサーナ・トーレス)。撮影:鈴木仁篤 録音:ロサーナ・トーレス 編集:鈴木仁篤、ロサ…

『少年と犬』『十月のレーニン』『65』『アダプション』『アフターサン』『春の劇』『暗闇の秘密』『殺し屋ネルソン』『TAR ター』

ひょっとして気圧のせいか、前夜の酒が抜けないのか、寝不足か、せっかくの休みだがやる気出ない。『ター』を見る気力わかず、L・Q・ジョーンズ監督『少年と犬』をシネマート新宿の大きい方に見に行くが、なんだかその判断が最善だったかわからない一日。別…

日記ではないが雑感?

映画監督とは信用できない人かもしれないが、監督作品を見ながら信用をしたくなることはある。なぜ鈴木則文の映画は中島貞夫よりも、東映の名匠や奇才よりも信頼したくなるのか、というか『トラック野郎』シリーズの一作目を見直して思った。加藤泰やマキノ…

青石太郎 作品上映会(キノコヤにて)

青石太郎 映像作家 サイト https://aoishitarou.com/ キノコヤへ青石太郎上映会を見に行く。 『時空は愛の跡』。158分。撮影期間はわずか5日間らしい。劇中で流れる時間も5日くらいか。やや、というか失礼なくらい意識がボンヤリしたまま見てしまった箇所多…

『せかいのおきく』『独裁者たちのとき』『アルマゲドン・タイム』『それでも私は生きていく』

阪本順治監督話題のウンコ映画『せかいのおきく』を見る。先日自分という人間にはつくづく「せ」とつくものが欠けていると思ったが、なんとこの映画も「せかい」を始め、真木蔵人が「せ」のことでウンウン堂々巡りしていて大変感動した。もう声の出ない黒木…

『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『イーオー EO』

金子由里奈監督『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を見る。ロバ映画ではないが、ぬいぐるみの主観ショットはある。自分が20歳くらいの頃に聞いた、台詞に「ちょっといい?」などのエクスキューズが入ったりすることで芝居が遅く長くなる、という話を思い…

デヴィッド・ロウリー『ピーター・パン&ウェンディ』など

住本尚子さんの短編を見に行く(『ふゆうするさかいめ』はすみません、何度も見てるので……)『オとセとロ』は最終的にタイトルまんまというか、白と黒と、その繋がってるのか何ともとらえどころはないが、ある意外とキツい場面および何とも触れがたい省略を…

『上飯田の話』(監督:たかはしそうた)

たかはしそうた監督『上飯田の話』を見る。上映時間わずか一時間と少し、しかも三つの話に分かれているから仕事終わりなど疲れた頭で見るのにちょうどいいかもしれない。しかしオムニバスと言い切るには単純に繋がりがあるから引っ掛かるというより、そもそ…

『トリとロキタ』『京極真珠』『ダークグラス』『ノック 終末の訪問者』

ダルデンヌ兄弟の新作くらいは今を生きる人間の務めとして見なくてはと『トリとロキタ』。そしてやはり呆気ないまでに簡潔な結末。自分の感受性のなさに絶句するほど、なにかボンヤリ見てしまったのも事実だが。反芻したり、人の感想を読んだりして、そこに…

『くせのようなもの』(2020)『ハル、さるく』(2021)佐伯美波監督作品上映会@キノコヤ

佐伯美波監督作品上映会@キノコヤにて『くせのようなもの』(2020)『ハル、さるく』(2021)の二本を見る。『くせのようなもの』は撮影現場の合間に助監督から自作の脚本の相談を受けた監督が、遠方に見える今は使われていなそうなバス停に座って佇む老婆に…

jaIHoに滑り込みでミゲル・ゴメス『アラビアンナイト』の第三章だけ広島以来見直す。本当は一、二章も見たかったが一足二足先に終了していて残念。初見ではあまりにオープンなエンディングに「これアリなんですか」とご一緒した方へ聞いてしまったが、改めて…

国立映画アーカイブにて『眞人間』(監督:伊奈精一)『野口英世の少年時代』(監督:関川秀雄)。『眞人間』はラング『真人間』の翻案のはずが、しかも50分と短いのに随分と間延びした展開で猛烈に眠くなる。ラング版クライマックスのヒロインが泥棒達に講…

ジョージ・ミラー『アラビアンナイト 三千年の願い』

予告ではテリー・ギリアムの映画みたいと勘違いして興味わかなかったが、ティルダ・スウィントンの主演作としてアピチャッポン『メモリア』見たのか?というくらい彼女の佇まいや、そもそもやたら低音が効いているあたりに感じる。しかし個人的には『メモリ…

サッシャ・ギトリ特集②

サッシャ・ギトリ『王冠の真珠』これまで見たギトリの中では最もアラン・レネに近いかもしれない複雑さでもって、過去や異国を行き来していくわけだが、しかしレネならやらないような「それ本当に繋がってる?」と初っ端から言いたくなるヘンテコさ。ファー…

サッシャ・ギトリ特集に通い始める

サッシャ・ギトリ、フェルナン・リバース『幸運を!』を見る。 まさに見たら良いことありそうな映画。 「幸運を!」(Bonne chance!)の声が、声をかけられたヒロイン、ジャクリーヌ・ドゥリュバックが聞いたのか、単に脳内でリフレインしているのか、ほとん…

2/18~3/10くらいまでの映画日記

ポール・バーホーベン『ベネデッタ』を見る。好きな監督のつもりだが『エル』のことは正直あまり覚えていない。エログロ版『修道女』だろうと(随分待たされたせいか)なんか想定の範囲内の題材と高を括っていたが、初っ端の賊が○の○で退散する展開から、こ…

神保町シアターにて澤井信一郎監督作品を見直す

www.shogakukan.co.jp 澤井信一郎特集スタートしているのに乗り遅れて、二週間逃す。随分久しぶりの神保町シアターにて澤井信一郎監督『福沢諭吉』。哀川翔のことしか覚えてなかったが、火野正平もなんかよかった。男だらけの話だが女優が出てくると一気に色…

『花つみ日記』(監督:石田民三 脚本:鈴木紀子)

国立映画アーカイブにて石田民三監督『花つみ日記』。再見のつもりが、たぶん恥ずかしながら何一つ覚えているところなく、おそらく見たことなかった。仲良しの高峰秀子と清水美佐子は一緒に刺繡を編んで葦原邦子演じる先生へプレゼントをしようと約束したの…

『コンパートメントNo.6』と『小さき麦の花』について

www.kinenote.com ここで須藤健太郎氏は『コンパートメントNo.6』を主題の面で批判していて、『小さき麦の花』をショット(「映画の原理」)という点で評価しているのだろうけれど、『小さき麦の花』の知的障害のある妻であったり、血を売らせたり、強制移住…

2/12 リー・ルイジュン『小さき麦の花』ユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』

リー・ルイジュン『小さき麦の花』一部高評価を聞き見に行くが、国際映画祭にて評価されたアジア映画(中国映画)という型の退屈さをどうにも超えるものには見えず(要はフィルメックスで見そう)、きつい。収穫やレンガ作りに中国には見えない画面の力とか…

2/4 『カロクリサイクル 展覧会 語らいの記録 2011-2022』、AFAアニメーション短編集、『きゅうり畑のかかし』、『ジェイソンの肖像』、『襲われた駅馬車』

www.3331.jp 3331にて『展覧会 語らいの記録 2011-2022』。この時間しか行けず、いくつかの書籍に目を通したのと、映像は一作品しか見れず残念。震災11年後(2022年)を機に作られた、現在は仙台在住の人々それぞれの11歳の時の記憶を、話し手の生年ごとに一…

2/4

モフセン・マフマルバフ三本をアテネフランセにて。『パンと植木鉢』は改めて傑作だと思う。カップルの犯罪者(フリッツ・ラングからケリー・ライカートまでアメリカ映画的といえる)を連想させる少年少女(もちろん彼女が黒のヒジャブを身につけていること…

2/2

国アカのサム・ニューフィールド『草原のハーレム』は記録的寒波の日に一気に眠気に襲われダウンした上に、目が覚めてる範囲も「漫才か」「低予算だな」くらいの印象で済ましてしまったのだが、今日アマプラにある同じ監督の『空飛ぶ翼蛇』を見たら、これが…

トマス・グティエレス・アレア『悪魔と戦うキューバ人』(71年)

『理大囲城』を見た時に『レボルシオン 革命の物語』がよぎって「そういえばトマス・グティエレス・アレアの映画をどこかで上映するな」と思い出したら、結局この国立映画アーカイブの上映だった。ユーロスペースでの『低開発の記憶』上映をはじめ、ケイズシ…

2022年邦画ベスト(仮)

2022年邦画から10本選ぶなら『にわのすなば』(黒川幸則)『日本原 牛と人の大地』(黒部俊介)『川のながれに』(杉山嘉一)『背』(七里圭)『弟とアンドロイドと僕』『冬薔薇』(阪本順治)『AKAI』(赤井英五郎)『ケイコ 眼を澄ませて』(三宅唱)『ザ…

1/25

24日の夜から尋常じゃない冷えが襲ってきて油断していたからしんどかったが、25日も予定があり外出したが、外で10分立つだけで寒さが辛く、信号待ちさえきつい。頭が働かなくなる。 ドン・シーゲルをやはりスクリーンで見ようと決めたが、時間間に合わず予定…