2018-01-01から1年間の記事一覧

2018年新作ベスト

『蝶の眠り』(チョン・ジェウン) 『犬ヶ島』(ウェス・アンダーソン) 『草の葉』『それから』(ホン・サンス)※『川沿いのホテル』は見逃した。 『いかにしてフェルナンドはポルトガルを救ったか』(ウジェーヌ・グリーン) 『フィフティ・シェイズ・フリ…

『奈落』(監督:高橋洋 脚本:郷淳子)

eigabigakkou.com 少しだけ映画美学校映画祭。万田邦敏監督作は見逃す。 高橋洋監督『奈落』は演習だから映画美学校内で撮影されて当たり前だろうけれど、舞台上での場面転換のように背景のイントレが移動して、男がスタジオ内を歩いて彼の自室とされたベッ…

水下暢也『忘失について』

www.shichosha.co.jp www.asahi.com 水下暢也『忘失について』を買って、自分にはこんなに読めない漢字、意味を知らない単語が多いのかと驚く(大変失礼ながら作者の名前さえ最初は読めなかった)。現代詩手帖と朝日新聞に掲載された作品を読もうとした時も…

『草の葉』(ホン・サンス)

filmex.jp www.youtube.com フィルメックスに間に合いホン・サンス『草の葉』だけとりあえず。終盤のキム・ミニによるモノローグを聞くと、このカフェにいて盗み聞き(見)た人々の会話の数々が、わりと本気でプルーストの社交生活への視線と通じるんじゃな…

『憐 Ren』

eiga.com www.cinemavera.com 中央評論 270 『憐』を見直して、「中央評論」270号「特集:日本映画」掲載、堀禎一「小津安二郎監督の『技術』入門編」に「待ちポジ」の話が出てきたことを思い出した。 そして小津監督がことあるごとに好きな映画監督とし…

『肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー』vol.2

www.youtube.com www.uplink.co.jp 『ものかたりのまえとあと』展 青柳菜摘/清原惟/三野新/村社祐太朗 | nobodymag 『肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー』vol.2へ。 どちらも「少女たち」の映画かもしれないが『暁の石』の工員らしき男たちは(少なくとも『…

『カメラを止めるな!』

『ポプテピピック』が二度繰り返され、『わたしたちの家』が一つの家を舞台に二つの話を行き来する。廣瀬純のスピルバーグ評をなぞれば、『レディ・プレイヤー1』はゲーム内部と外部とプレイヤーの話を二度繰り返す。『カメラを止めるな!』は確信犯的に三度…

『怪談 呪いの赤襦袢』

記憶を失ったヒロイン浜崎真緒の夢見る女同士のSMから始まって、幽霊になった彼女と性転換した恋人(小坂ほたる)とのベッドシーンに至る。夫を名乗る男(野田博史)との行為は監視されていて、精神科医を名乗る女(加藤絵莉)が彼女の表情を分析、快感より…

『ゾンからのメッセージ』

www.youtube.com call-of-zon.wixsite.com news.ponycanyon.co.jp eiga-b-gakkou.blog.jp eiga-b-gakkou.blog.jp eiga-b-gakkou.blog.jp 鈴木卓爾監督の映画の人物たちは、ある場所に集まっていて、その場所は喋り声や楽器や映写機か何かの機材の音やらが常…

『独房X』(監督・脚本 七里圭)

www.youtube.com 伯林漂流東京 今泉浩一生前追悼上映会へ。『伯林漂流』ほか監督作は見逃す。 出演作の七里圭監督『独房X』。近未来を舞台にしたエロ版『羊たちの沈黙』のはずが、まるで収容所が舞台のアングラ劇を記録しているようだった。『サロメの娘』シ…

『エリーゼを解く』(松本恵)

www.ncws.co.jp 彼女は恋人を友人に奪われたから傷ついているのか、元ボクサーは何に挫折したのか、ひとまずそれが見ている僕にとってどれほどどうでもよくても、映画は良かった。電話越しの元ボクサーの話が止まらなくなった時、まともに聞いたらウザいかも…

『王国(あるいはその家について)』(草野なつか)

www.youtube.com www.youtube.com 見直さずに印象で書くと後悔しそうだけれど『螺旋銀河』は、創作行為のプロセスを丁寧に追ったように思わせてくれた気がする。別に時計を見ながら体験したわけではないのに、分数ごとに、二人の主人公を行き来しながら、感…

『BLEACH』(佐藤信介)

pff.jp 『いぬやしき』は不快感が勝ってしまったが『BLEACH』には感動した。杉咲花や福士蒼汰の過ごす原作序盤の日々のあれこれが、自主映画時代の『寮内厳粛』『月島狂奏』『正門前行』を連想させるくらいに膨らんでいった(WOWOWで見れた)。原作を読んで…

『夜の浜辺でひとり』『それから』

www.youtube.com www.youtube.com crest-inter.co.jp crest-inter.co.jp 『夜の浜辺でひとり』、見返す度に印象の変わる映画に違いないけれど、ひとまずキム・ミニの異物感に尽きる。ハンブルクという地名が頭に残らない(英語ならばどこでもよかったのか、…

『ソレイユ・スリヤン』(黒川幸則)

黒川幸則監督撮影・編集『音楽室』『音楽室2』『花見』『ソレイユ・スリヤン』。ダウン症の少年少女たちの、楽器を叩いたり投げたりノイズ音楽映画から始まって『音楽室2』『花見』の少年少女のスキンシップ、そして『ソレイユ・スリヤン』のお絵描き。『ソ…

『夜が終わる場所』(宮崎大祐)

www.youtube.com たしか2012年に見た時は苦手だったが、昨日見直したらとても面白かった。個人的な印象の域を出ない感想だが、5年以上経った今となっては新作としてではなくVシネやピンク映画(若松プロとか)の忘れられていた一本が再上映されたのを見たよ…

小林耕平『あくび・指南』

bijutsutecho.com YAMAMOTO GENDAI 毎度のとおりなかなか楽しかったが、いつも渡邉寿岳撮影の「対話型の鑑賞記録」を見ていて笑えつつ眠気に襲われるので、タイトルになるほどとなった。『殺・人・兵・器』(だっけ?)もポンコツの永久機関となった展示品には…

『ピンパン』『ライセンス』(監督:田中羊一)

www.youtube.com シネマ・レガシー vol.1 Cinemalegacy01 『ピンパン』も『ライセンス』も、『そっけないCJ』の夏休みの愛しさや切なさと比べて(あまりにグッときて素直に良いと言えないままの『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』と同じく、あんな映画を…

『蝶の眠り』(チョン・ジェウン)

明らかに遅れてきた人間だから逆にアホみたいに恥知らずな断定をしたくなってしまうのだと自分が嫌で仕方ないが、だいたい毎年「今年はこれ見れたから、もう他はどうでもいい」という映画が、矛盾してるが2、3本あって、それはおそらく誰にでもあるが、そし…

港町(監督・製作・撮影・編集:想田和弘、製作:柏木規与子)

www.youtube.com www.cinra.net 想田和弘の映画はタイトルがフレデリック・ワイズマン「もどき」「後追い」として読むと、結果タイトルと作品の釣り合いが取れていないんじゃないかと気になりそうで、既に見る前のハードルのようなものになってしまい何度も…

泳ぎすぎた夜(五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル)

www.youtube.com oyogisugitayoru.com 片方の手袋をなくしている少年が、まるで『蠅男の恐怖』の一方は人間の、もう一方は蠅の腕を持つ引き裂かれた存在への、かつて人間だったが今では人間以外の怪物へ変わりつつあるように見えた(『蠅男』と化す少年は塩…

vimeo.com クリストフ・クラヴェールの映画を見る。最近のストローブ単独の映画についてよくわかっていなかった、たとえばジャンプカット(?)も(『コルネイユ=ブレヒト』の衣装チェンジとか)、水辺や森林のロケーションも、より面白く(B級映画的経済性…

『小さな声で囁いて』(山本英)

www.youtube.com 熱海を舞台にした倦怠期カップル二組のバカンス映画。ロッセリーニ『イタリア旅行』、エリック・ロメールとホン・サンスの諸作を当然思い出す。それら先行の作品に対するズレも含めて「よくできた宿題」に見えてしまうこともある。 前作の『…

『霊的ボリシェヴィキ』(高橋洋)

spiritualbolshevik.wixsite.com トランプの切り返しが見ていて恐怖以上に痛快だった。あんな瞬間をどうやって表現するか、映画に導入するか、ずっと頭に思い描いて練習してきたに違いないと勝手に思った(実際は直前に見た映画を真似したのかもしれないが)…

『スリー・ビルボード』。監督が北野武のファンと聞いていたせいか、牧師との切り返しあたりでピンときて、あっさり続く歯医者のシーンから『アウトレイジ』シリーズへのオマージュってやつが捧げられる。スコープサイズにおさめられた人物たちの面構えや、…

石原海『忘却の先駆者』。オリンピックの感動を全国民が忘れないために、記憶を絶対に失わなくなるクスリの服用が義務付けられる。アルツハイマーの母は政府の機関によって拉致・拘禁され、強制的にクスリを服用され続ける。相変わらず、かつてのアップリン…

『さいなら、BAD SAMURAI』『ウルフなシッシー』(大野大輔)

www.youtube.com 映画を見る時間によって意識をリセットさせる。もしくは睡眠によって設けているはずの意識の休息ではなく、覚醒しながら夢を見るような(どことなく不健全な)時間。 大野大輔監督の『さいなら、BAD SAMURAI』『ウルフなシッシー』を見終わ…

2017年、とにかく自分の中に残った映画として『ツインピークス リターン』『西遊記2 妖怪の逆襲』『アウトレイジ 最終章』『ファンタスティック・ライムズ!』(『LOCO DD』大工原正樹)『夏の娘たち ひめごと』 同時に他の人と全部被っているようなものだが、…

堀禎一監督の『夏の娘たち』は『天竜区』における映画製作が反映された劇映画であって、これまで見たことのない映画を見ていると興奮した。デヴィット・リンチの『ツイン・ピークス The return』にも『インランド・エンパイア』その他の作品(どう名付けるべ…

2017年の大工原正樹監督作品『ファンタスティック・ライムズ!』『やす焦がし』は新しい境地を切り拓いていた。演出・脚本ともに大工原正樹監督にしか撮れない映画であって、同時に『ジョギング渡り鳥』『ゾンからのメッセージ』など近年の鈴木卓爾監督作品…