『ルート29』

見始めてからリトルモアだと知る。 リトルモアの映画は『舟を編む』から毎度リトルモアと知らずに見て、上映始まってから気づく。それはリトルモアの戦略か、単に自分が情弱なのか。 また綾瀬はるかが連れて行く子が『こちらあみ子』と同じと最後までわから…

ゴダールの『Scénarios』『Exposé du film annonce du film “Scénario”』

東京国際映画祭にてゴダールの『Scénarios』。DNAとMRIの二部構成。映画作家とMRIというと『監督ばんざい!!』を思い出す。北野武の新作も同じ話を二回繰り返すらしいが、ゴダールのシナリオも二回繰り返す。しかしゴダールの過去作で、二度同じような冒頭…

『孤独の午後』(アルベール・セラ)

アルベール・セラ『孤独の午後』。 ファーストカットが牛。 次のカットも牛。 三カット目が車内の闘牛士を正面、やや仰ぎ見る(車内のアングルはほぼここからのみ、 一回だけ車窓のカットあり)。周りのメンバーたちも後景に映る。以前にお世話になった方と似…

東京国際映画祭②『聖なる儀式』(アルトゥーロ・リプステイン)『ダイレクト・アクション』(ギヨーム・カイヨー×ベン・ラッセル)『不思議の国のシドニ』(エリーズ・ジラール)

アルトゥーロ・リプステイン『聖なる儀式』。勝手にキワモノを予想していたが(サービスカットもあるが)意外と地味。 『深紅の愛』は『ハネムーン・キラーズ』という凄いカットが続く不世出の名作がある分、単純に長すぎる、かつ出頭前の母子殺害はさすがに…

東京国際映画祭①『英国人の手紙』(セルジオ・グラシアーノ)『死体を埋めろ』(マルコ・ドゥトラ)

東京国際映画祭にて『英国人の手紙』(セルジオ・グラシアーノ)。上映後の舞台挨拶では、やはりパウロ・ブランコが拝めてよかった。恥ずかしながら原作のカルヴァーリョのことは全く知らず、脚本のジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザも検索して邦訳が出て…

『シビル・ウォー』『国境ナイトクルージング』

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(アレックス・ガーランド)。なかなか面白かった。戦争映画・従軍記者の映画というよりロメロの衣鉢を継ぐようなアクション映画に近い……とか思ったが、既に千浦さんがTwitterに書いていた。銃撃戦の合間に写真を挟む編集…

『雪割草』(田坂具隆)

田坂具隆特集にて『雪割草』(51年)。後半になり三條美紀が夫の宇佐美淳也を迎える場面になって、その手で触れる一つ一つの仕草のアップからサイレント期の画づくりが移植されたようになる。それでも音声面が後退するわけでもなく、少年は玩具の電話を手に…

田坂具隆特集②『長﨑の歌は忘れじ』『月よりの使者』

田坂具隆特集にて『長﨑の歌は忘れじ』(52年)『月よりの使者』(34年)。『長﨑~』は『愛の町』(28年)と構成は近く(盲目の人物が異国の地にいる人の帰りを待っている中、相手が既に亡くなっていることを知る人物が訪れ、最初は頑なに心を閉ざすも最終…

田坂具隆特集①

田坂具隆特集『路傍の石』からスタート。誠に恥ずかしながら原作未読(読むべきとは常々思ってます)。そして今まで内緒にしてたが「学問のすすめ」さえ未読(明日にでも読まなければと思ってます)。「学問のすすめ」を朗読し、ようやく開けた中学進学への道の…

『HAPPYEND』(空音央) ※10/15加筆

友情において、相手に「変わってほしい」と願うのは難しいもので、同時に「変わってほしくない」ものとしての友情を見出す作品かもしれない。野球部キャプテンが減点されるシーンで、その様子を笑う主演男子二人の姿など、微妙にこじれそうで付かず離れずな…

『19世紀ジョージアの記録』(78年 アレクサンドレ・レフヴィアシヴィリ)

ジョージア映画祭期間延長のおかげで劇場に間に合った。ちなみにネット上にアップされてるものは(ok.ru.とか)ロシア語吹き替えだった。馬車が浅い川を走り抜けるロングに繋げて、揺れの音やぐらつきを引いた画で見ることで変化が波のように際立つ。その波は…

『ビートルジュース ビートルジュース』(ティム・バートン)

ティム・バートンの『ビートルジュース ビートルジュース』も見た。『ダークシャドウ』あたりからオープニングが常に優雅だが、本作の空撮からミニチュアへと、いつの間にか(最初から?)変わって、屋敷の窓辺へ向かう冒頭部の貫禄にも感動した。ジェニー・オ…

『Cloud』(黒沢清)

黒沢清『Cloud』。 『Chime』と『蛇の道』より良いとか悪いとかより、三本セットみたいな印象。3作が同じ舞台で繋がってても驚かないというか、むしろ廃工場に着くと、そう見せている気さえする。作品間を跨ぐ要素を入れて、結末や細部を曖昧にするのはVシ…

『SUPER HAPPY FOREVER』(五十嵐耕平)

『SUPER HAPPY FOREVER』(五十嵐耕平)。足立智充の出番は安定感がある。いかにも『雨月物語』みたいな流れで、扉をあけてきた彼女を追いながらパンして2018年にジャンプし、エレベーターから降りてきた人物を追いながら視界に映り込むホテルのロビーの賑わい…

映画日記みたいなもの

・アンダース・エンブレム『ヒューマン・ポジション』を見る。癒し系に非ずというのはわかる。記者の取材は内容に関わらず記念撮影のようでもあり、同時に記事に対して相応しいか、演出されすぎて見えないかの塩梅は気にする。結果、映画の調子も意図的に淡…

『きみの色』

これまで見たことのない(不勉強で大変申し訳ございません)山田尚子監督の『きみの色』を見る。カット尻の短いわりにシーンごとの時間はゆったり描かれて見えて、それがまどろっこしい割に人物の背景みたいなものがなかなか語られず、勿体つけているだけじ…

リチャード・リンクレイター『ヒットマン』

リンクレイター版『一度も撃ってません』というかジェリー・ルイスの『底抜け大学教授』を彷彿とさせる人間の二面性をめぐるコメディなので『底抜け殺し屋稼業もラクじゃない』みたいな邦題が相応しい……なんて思いながら見ていたが、既に荻野洋一氏のレビュ…

『蛇の道』『蜘蛛の瞳』(監督:黒沢清)

どちらも久々に見る。前者の柳ユーレイ、後者のダンカン、続けて見ると黒沢清の(もしくは脚本の高橋洋・西山洋一による「復讐」という題材の、または哀川翔という役者の)A面B面という印象になるのも、北野武のこだわる二面性(新作『Broken Rage』もその試…

『ナミビアの砂漠』

過去作では男女もしくは女同士の二人組が中心にあった印象だが、本作の河合優実に対して金子大地が主役と拮抗する存在かは怪しい。観客として、はたして最初の同棲相手である(甲斐性も可愛さもある)寛一郎を捨て、金子大地を選んだ先を見ていられるか。ど…

『明日はない』『ある女の愛』『デ ジャ ヴュ』『ハンナだけど、生きていく!』『ナイツ&ウィークエンズ』

マックス・オフュルス『明日はない』をアマプラにて見直す。ブロードウェイのDVDより明らかに綺麗な画質で見れてよかった。小林豊規監督『静かに燃えて』のオーバーラップに対してオフュルスを思い出す素養のない自分だが、改めて見て、容赦なく過ぎていく時…

アレクサンダー・ペイン『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

アマプラにてアレクサンダー・ペイン『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』を見た。ここ数日、仕事したり、酒を飲んだりしている間に「今後の人生で自分は気の利いたことは一つも言えないだろうし、つまんない奴だなあと周り(特に若者)から思わ…

『至福のレストラン 三つ星トロワグロ』(フレデリック・ワイズマン)

ワイズマンもすっかり余生モードだな…と見る前は思っていて、実際に映画も後半ほど「余生」といった感じが強くなり、むしろ感動する。 近作の中でも個人的にワイズマンでなかったら見ないだろう題材だからか、あまり気負わずにいけたおかげで4時間は全然しん…

コルム・バレード『コット、はじまりの夏』 ジュリエット・ベルト、ジャン=アンリ・ロジェ『雪』

見逃していたコルム・バレード『コット、はじまりの夏』を自宅で。始まってすぐに原題の「the quiet girl」と出た瞬間、妙に唸ってしまう。それくらい予想以上に淡々と出来た映画だった。先日見直した『リスボン特急』とほぼ同じ95分で、あちらの容赦無い速…

『これで三度目』『リスボン特急』『権力の陶酔』

映画を見に行けていないわけではないが、あまり集中できていないのか、自宅で見た映画の感想ばかりになってしまう。 ・アマプラにてクロード・シャブロル『権力の陶酔』。日仏では日本語字幕なしだったが漠然とシャブロルにしか撮れない映画だろうという印象…

『ネプチューン・フロスト』

ソウル・ウィリアムズ、アニシア・ユゼイマン監督(略してSWAN)『ネプチューン・フロスト』。冒頭2カット目の青空と雲に不意をつかれ、つづく埋葬の花々、ドローン視点のようでクレーンらしき俯瞰ショット、視界を覆う土と、微妙に安定しないズームの画面の…

『ヴィタリナ』(ペドロ・コスタ)

下高井戸シネマにてペドロ・コスタ『ヴィタリナ』を見直す。今回も修行足りず序盤ウトウトしていたら、なぜか途中入場してきた客が僕の席に座りかかろうとしてきたので一気に目が覚めた。その客の挙動が気になって少し集中できなかったが、ある意味コスタの…

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(トッド・ヘインズ)

水辺での焦点のボヤけた画を見ながら、一つ一つフィックスの画面に反して、カット同士の繋がりは『関心領域』のこともよぎって、ところどころ落ち着いて見れない。「ソーセージがない!」のズームと大仰な音楽から変だ。ホン・サンスが奇妙なズームをやめる…

『WALK UP』(ホン・サンス)

一軒のアパートのみを舞台に、あとは画面に出てこない済州島が気になる。ハングル一文字のタイトルが出て、文字の構造自体が映画そのものを現しているかもと錯覚する。 画面外についての映画という話も聞くが、『小説家の映画』同様、画面内にギリギリ全てを…

ヴァンサン・グルニエ特集@下高井戸シネマ

www.shimotakaidocinema.com 上映決定〈現代アメリカン・アヴァンガルド傑作選2024〉7/13(土)〜7/19(金)21:00日替り上映★13(土)、14(日)、18(木)上映後、西川智也さん(映像作家/キュレーター)と ゲストによるトークあり!現在ますます活況を呈しているアメリ…

『プロミスト・ランド』(飯島将史)

飯島将史監督『プロミスト・ランド』を見る。序盤は何故そのタイミングでカットして黒画面を挟むのか、編集の意図が掴めず、歯切れの悪い印象を受ける(役者も小林薫、三浦誠己、渋川清彦と見た人ばかり出てきて、あまりキャスティングに面白みは感じない)…