2016-01-01から1年間の記事一覧

2016年ベスト。新旧混合。 『物質の演劇』(ジャン=クロード・ビエット) 『ヘイトフル・エイト』(クエンティン・タランティーノ) 『フランシスカ』(マノエル・ド・オリヴェイラ) 『朝霧街道』(加藤泰) 『皆さま、ごきげんよう』(オタール・イオセリ…

2016年邦画新作を振り返る。順不同。 『ジョギング渡り鳥』(鈴木卓爾)『団地』(阪本順治)『クリーピー』(黒沢清)『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(黒川幸則)『さらば あぶない刑事』(村川透)『人間のために』(三浦翔)『遠い火/山の終戦』(…

デヴィッド・ロウリー『ピートと秘密の友達』。ピートが交通事故を悲劇と認識する前に冒険の始まりと感じたかのように、自動車は宙を舞う。そして視点は事故を引き起こすきっかけになった鹿へ切り返し、少年のすすり泣きが聞こえてくる。彼自身の主観が悲劇…

映画美学校映画祭。『この世の果てまで』(川口陽一)と『瑠璃道花虹彩絵』(西山洋市)だけ。 『この世の果てまで』は『ジョギング渡り鳥』チームによる映画、という印象。監督が録音/音響スタッフだけあって当然音に意識が向かう。歌と、それを歌う人たち…

『二十代の夏』(高野徹)

summer20s.tumblr.com www.youtube.com 高野徹監督『二十代の夏』再見。 高野さんの作品では『お姉ちゃんとウキウキ隅田川』が特に好きだが、deronderonderonのPV『IKIL』と東京成徳のPR映画『おはよう』など、近作が人生における「船出」を扱ってきたことを…

www.youtube.com pff.jp 次回20日15時~上映@フィルムセンター 『人間のために』(三浦翔)は学生映画的な芝居から映画内演劇、パフォーマンスの撮影とインタビュー行為が並べられていたが、同じPFFでの上映作品の中からは(2プログラム、計5本しか見てない…

『人間のために』(三浦翔)

www.youtube.com pff.jp ※2016年のまとめで、改めて感想を書いた。 http://nakayama611111.hatenablog.com/entry/2016/12/31/014545 PFF@2016/9/11 『人間のために』三浦翔 結城秀勇 | nobodymag 最後の手紙なのか原稿なのかを読み上げる女学生の声と言葉と…

『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(黒川幸則)

渡邊寿岳さんの撮影した映画は、その画から映画を語るとバカバカしい気分にさせる。「キンキンに冷えたビールをお見舞いしてやる」から「ナイステイクアウト」まで、正確にではないが妙に忘れられない言葉たちでもって、「良かった」というのも虚しくなる。…

『太陽』(入江悠)を見た。抽選の行われる夜、門を越えて車を待つ門脇麦と、FAXが送信されてすぐに結果が返ってくるまでの役場のワンカット、続いて彼女が母親の車に乗って鶴見辰吾と室内に続くシーン、もう一方に門の手前で抽選結果をめぐって繰り広げられ…

(5/12 修正) 上田真之『部屋の中の猫』、見終わってから上田さんの話をもっと聞くべきだった気がする。自分の興味に引き寄せすぎて、何か物足りなさばかり感じてしまった。たしかに思い出してみると、絵を描いている人を目の前で見たことがない。 『部屋の…

アドルフォ・アリエッタ『Flammes』@MUBI。 mubi.com 幼い頃の悪夢を何故だか見直したくなる気分に最も近い映画。 と、まるで自分の経験とつながっているかのように安易に形容していいかわからないけれど、作品に触れることで(良くも悪くも)自分の失われて…

佐野和宏『バット オンリー ラヴ』、序盤のやり取りから「二歳の不良の映画」と形容してみるには、枯れた味わいかもしれない。特に物語的には嫌いと言いたくなってしまうところもある。それでも瞬間瞬間の見たことない、おそらく監督・主演だからこその自ら…

鈴木並木さんに対して酷い絡み方をしてしまった時期のあった自分が書いていいかわからないけれど、只石博紀監督の映画を見ていると、5分か、もしかすると5秒も集中して見ていられない画面でも、見るのをやめるというよりは、あえて「作業用BGM」のようにその…

『にじ』(鈴木卓爾)、二回目。ただしフィルムで見たのは初めてだと思う。「ロールチェンジ!」があるためか、その後の雰囲気が変わった気もするし、繋がっていても変化は感じなかった気もするし、ともかくこの作品のどこへ向かうか、作り手本人もわかって…

『ヴァンパイア 最期の聖戦』(ジョン・カーペンター)を見直した。もう動物相手にやったらNGな狩りでも吸血鬼ならOKという戦略が映画を延命させている。『ザ・ウォード』の看守が黙って読書している短いカットを挟んでいるような、登場人物ほぼ全てに向けら…

これまで見逃してきた『私刑』(中川信夫)、ようやく神保町シアターで。しかし眠気に襲われ、ところどころ気を失う。残念。それでもタイトルから勝手に想像していた映画とは全く別の印象を受けた。いや、誰が見ても予想通りのものにはならないと思う。まさ…

夜勤明けに『旅役者』(成瀬巳喜男)、ほとんど寝てしまい、会話は全て頭に入らなかったが最後に唖然とする。悔しい。 『裸女と拳銃』(鈴木清順【清太郎】)、初見。二作目の『海の純情』を見て、『悲愁物語』『カポネ 大いに泣く』『結婚』あたりの出鱈目…

三隅研次『新女賭博師 壷ぐれ肌』、無茶苦茶面白く、漫才、カーアクション、音楽を流しながらのイカサマ仕込み、最後のサイレンが渡世人の映画と思うとミスマッチ、しかし序盤の歌と映像によって、お約束事も異様に浮き出ているから変な映画だった。音の使い…

川田真理監督の『タクシー野郎 昇天御免』は「種馬」の映画だった。主人公は「種馬」でも、この映画に馬は出てこない。代わりに、窓の外は合成された風景となって運動性の排除されたタクシーを舞台に、移動と性交が行われている。向かい合った夫婦の悲劇と、…

『FRAGILE DO NOT DROP KEEP DRY』(監督:上田真之 撮影:kae sugiha)

喫茶茶会記の『 三 -san- 』というイベントで上映された上田真之さんの『FRAGILE DO NOT DROP KEEP DRY』からは、知人友人の作品として刺激を受けた。嫌われそうな言い方をすれば、僕は仕事のせいでシャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン』を見…

『さらば あぶない刑事』(村川透)が、予想していた以上に良かった。特に浅野温子に泣かされるとは思わなかった。舘ひろしを挟んだ、横たわる奈々緒との切り返しによって、彼女が時空を超えてヒロインの座に返り咲いていた。 ともかく暗闇から二人の現れる…

その② 『ザ・ウォーク』(ロバート・ゼメキス)も見た。3D映画を見たのは久しぶりで、しかもこれまで数えるほどしか見ていないけれど、これは3Dで良かったと思う。(どのように彼自身が言っていたか忘れてしまったけれど)何か「理解」を拒んでいながら、し…

ここ最近見た映画について、その① アテネフランセで上映中のジャン=マリー・ストローブ単独監督作は『ミッシェル・ド・モンテーニュのある話』『影たちの対話』『ヴェネツィアについて(歴史の授業)』を見た。(『ジョアシャン・ガッティ』を除いて『母』…

マノエル・ド・オリヴェイラ『アニキ=ボボ』と『レステロの老人』を続けて見ると、子どもたちが一気に老人たちになっても、あまり違和感がなかった。カリートスとカミーロ・カステロ・ブランコの扱いも、主題的にも同じような。画面に映らない『絶望の日』…

2015年印象に残った映画、順不同、新旧混合。 『ジェーンはジョンを撃つ、彼がアンと寝たから』(ルドルフ・トーメ) 『GONIN サーガ』(石井隆) 『ナポリ王国』(ヴェルナー・シュレーター) 『妖艶毒婦伝 お勝兇状旅』(中川信夫) 『ゾンビ・ガール』(…

サミュエル・フラー『戦火の傷跡』、DVDで。フッテージで構成されたニュルンベルク裁判(裁判そのものと、そこで映写されたはずの映像との境界を狂わせる)といい、その前後の暴動と火災にラング『激怒』との比較を考えさせる。そして物語の中心をあえて見失…

三隅研次『無宿者』の余計な説明を省いたようで、視界を覆う霧や、顔に寄ると抽象性を増す空間、情報以前に耳を横切っていく言葉の数々とともに迷宮へ誘われていく感覚はモンテ・ヘルマン『銃撃』やジョン・ブアマン『ポイント・ブランク』を初めて見た時と…