2017-01-01から1年間の記事一覧

『やす焦がし』(大工原正樹)

https://aoyama-theater.jp/pg/3465 大工原正樹監督『やす焦がし』、またしても女二人男二人の映画だった。女二人の踊りもある。そして勘違い男が情緒不安定な女と出会って恋に落ちる映画だと思って見ていると(実際そんな話でもあるが)、それぞれに異なる…

www.youtube.com 『季節の記憶(仮)』公式ホームページ 只石博紀監督『季節の記憶(仮)』。カメラを一人称の主観として用いた映像の逆を行くように、複数の人物が覗かずに持ち運び続けた映像。『食人族』『ブレアウィッチプロジェクト』『クローバーフィー…

kumagai2017.exhn.jp 熊谷守一『轢死』、変色その他の理由による黒さがかえって目をひく。それが真っ黒でもなくじっと見ればぼんやりと輪郭は見え、また立体的でもある。展示のキャプションその他から興味深い情報はたくさんあるが、何より小田香監督の『鉱…

『オレの獲物はビンラディン』が妙に後を引く。社会風刺的な要素として受け取れるものは、ほぼほぼない。ニコラス・ケイジの起用はヘルツォークやポール・シュレーダーあたりへの目配せなんじゃないかという気もするが、その二人がもしも監督していたら、良…

もう見るのは遅すぎるし何の発見にもならないし無意味な自慢にしかならないかもしれないが、ジョー・サルノ『A Touch of Genie』Blu-ray購入。ポルノの観客が、骨董品の壺を触ると登場する妖精の魔法によって、ポルノの登場人物になって性交する。妖精は壺か…

『WATER MARK』(中川ゆかり)@海に浮かぶ映画館

船に乗せられた人々についての舞台。客席と舞台を共有する揺れと寒さについて、「寒くないですか」と聞き続ける。「寒くないですか」という言葉が視点を切り替え、役者が羽織ることになる衣裳が床に、まるですでに脱ぎ捨てられていたかのように落ちているこ…

『ある惑星の散文』(深田隆之)@海に浮かぶ映画館

umi-theater.jimdo.com www.youtube.com これほど船に乗って見るために作られた映画はないと思う。深田監督は自らの作品の上映に最もふさわしい場所を知り尽くした戦略家なのかもしれない。だがそんな狙いだけじゃなく、作品のそこかしこに見え隠れする別の…

『南瓜とマヨネーズ』は『亀虫』や『シャーリー』のような連作の中・短編のようにも見えて、そこが良かった。別にリンチのように語りを断ち切っていくわけではなくて、男女が別の映画の人物になってしまったかのように変わって見える。そう書くと『ロスト・…

中川信夫『影法師捕物帖』、西部劇、ソ連映画、ドイツ表現主義をワンカットごとに横断し、アラカンが田沼意次に刀を突き付けては何事もなかったかのように次の場面へ移って、また田沼に説教を繰り返し、どっから屋敷へ入ってきたかわからない相方がインして…

北島敬三のポートレイトに引き込まれた。撮られたのがどんな人なのかどころか、撮ったのかが誰なのか、いつ撮られたのか、などなど様々な情報が一掃されて背景が見えなくなって初めて、わずか3,4点の写真が強度を発揮する。そして3、4枚のショットの間を隔て…

レニー・ハーリンの『スキップ・トレース』、かなり良かった。初っ端の相棒が殺されるまでは「あ、これ乗り物酔いみたくなるやつだ……」と嫌な予感までしたけれど、すぐ後のドミノ式に倒れる水上家屋といい(ブラジャーが良い)、ボウラー兼ターミネーター率…

『新感染』見た。やっぱり列車とか移動の限定された細道でのアクションとかは盛り上がる。しかし『カーズ』三作目とか『トイ・ストーリー』とか見て思った、別に良く出来た映画(伏線を回収してくれるとか、「道徳的」というか良き人間像を示してくれるとか…

ジャック・ターナー『ベルリン特急』が日本にはVHSしかないと思っていたら、いつの間にかDVDが出ていた(たいした画質ではないが問題なく見れたと思う)。感動する。たびたび出来事に対し四、五人の人物が数秒の間に立ったり座ったりしながら各々の態度を表…

ツイ・ハーク『西遊記2』。初っ端から見世物小屋そのものとしか言いようのない悪夢のような世界(ホドロフスキーか石井輝男かという領域)がCGの有無関係なく繰り広げられる。しかし見世物小屋商売をやっている妖怪三人組と三蔵と小人とのふざけているという…

小田香『鉱』パンフレット、監督自身の言葉はもちろんだとして、小森はるか監督の文章が素晴らしかった。特に何か映画の理解の深まる情報が載っているわけではなく、むしろ映画の情報のなさを肯定しながら、映画との距離を一気に縮めてくれる。映画の撮れた…

ウリ・ロメル『Prozzie』。少女は母親が男を連れ込むのを鍵穴越しに見た。そして男が逆上し母を叩き死に追いやるのを見た。『ハロウィン』と同様の形式を辿るのかと思う。たしかに途中までは成長した彼女がサングラスとブーツによって人格を変え、誘い込んだ…

豊田四郎は昨年『若い人』を見て(新文芸坐見逃したから悔しくてネットで見てしまったが、いま調べたらもう消えていた)、文字通り「若い」映画なので、ここから豊田四郎も始まったんだと感動した。カメラのアングルとか、音がなければわからない映画を撮っ…

キアロスタミ『24フレーム』、24コマの1秒を2時間近くに引き伸ばした映画、というより4分30秒近い1フレームたち。その意味で『ホーリーモーターズ』と近い観点に立っている気がする。自動車の映画を撮り続けた作家にふさわしいのかもしれない。主に動物たち…

『きみなしで生きてみよう』(11/10)

www.youtube.com balladstokyo.wixsite.com 須賀彬太・統原直樹、そして『蘇州の猫』の内田雅章SVによる『きみなしで生きてみよう』と「中原昌也の白紙委任状」の時期が重なっているのは重要かもしれない。どちらもが徹底的に「キワモノ企画」の精神を持って…

『戦争と一人の女』(11/5 横浜)

awomanandwar.jimdo.com 無事に終演いたしました - 戦争と一人の女【舞台】 東京での公演とは別物だった。演出家も役者も坂口安吾を読んだ回数が増えて、文章にうんざりしているのかもしれないくらいになっている。しかし四者四様の輝きを放つ「女郎」たちは…

『LOCO DD』、ドキュメンタリーとドラマのパートが、それが事故によって分裂する田中要次篇、確信犯的に引き裂く島田元篇に対して、やっぱり双方が映画の演出によって結ばれている大工原正樹・FantaRhyme篇が素晴らしかった。初めて『痴漢白書8』を見て、諏…

小森はるか+瀬尾夏美『にじむ風景/声の辿り』は瀬尾夏美による物語『二重のまち』の陸前高田の人々による朗読であって、これまで以上に劇映画とドキュメンタリー映画の境界がにじんでいるともいえる……。テクストと朗読する人々との関係が不思議だ。その人た…

『わたしたちの家』(清原惟)

急に娘が母親にじゃんけん勝負を提案する。どちらか勝ったほうの家になって、負けたほうは出ていかなければならない、と言って娘は即座に始める。しかし切り返すとパーを出した母が「勝った」と自ら広げた手を見ている。「セリの負けだよ、どうするの。」一…

『ツインピークス』はビヨンドでなくリターンなのだ。誰が言ったか知らないが『ロストハイウェイ』の「リンチ・イズ・バック」という煽り文句が脳裏をよぎる。下手したら、また彼はいつの間にか私を置いていってしまうかもしれない。定住できずに作品を残し…

スクリーンで見るのは初めてじゃないのに、『天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝』、ひたすら見ていて気持ちよかった。眼が喜んでいる気さえした。『製茶工場』の後半はただただテンションが上がってやはりほとんど覚えられなかったが、どんどん画が音が…

誰もが言うことだけれど『草叢』は『宙ぶらりん』の美しい出発を画にするカーテン、鏡、そして自転車が引き継がれる。しかし自転車は姿を消す。これも誰もが言うことだけれど自転車はジョン・フォードの馬のように、生き物であって時に飼い主の意思と関係な…

堀禎一監督特集@ポレポレ東中野、処女長編『宙ぶらりん』の上映がもう終了しているのは残念だけれど、それでも今日、明日の「天竜区」シリーズから一週間だけでも充分すぎるほど凄まじい。ほぼ二人だけでつくられた「天竜区」。ただただパワフル。後半ひた…

『ジョン・ウィック チャプター2』には感動した。『ローガン』も『20センチュリー・ウーマン』も『夏の娘たち』も凄まじかったが、どれも最初からずっと良かった。でも『ジョン・ウィック~』は(別に我慢したわけでは全然ないが)最後まで見て感動した。今…

中原昌也個展@WAITINGROOMコラージュ、絵の具の盛られた量は激しく、告知WEBやアルバムのジャケットだけで感じ取れるわけがなく、意味のない比較をすればゴッホを日本の美術館で見るよりかショックを受けた。それは糞ではなく、イッてる女性の喘ぐ顔、乳房…

「世界に杭を打つ 上映会vol.1」へ。 三浦翔『ラジオ・モンタージュ』は、タイトル通りといえばタイトル通りの映画になっている。正しく「切り返し」についての映画。その切れ味だけでいえば『親密さ』より遥かに、誇張して言えば初期ファロッキ見た時のよう…