森はるか+瀬尾夏美『にじむ風景/声の辿り』は瀬尾夏美による物語『二重のまち』の陸前高田の人々による朗読であって、これまで以上に劇映画とドキュメンタリー映画の境界がにじんでいるともいえる……。テクストと朗読する人々との関係が不思議だ。その人たちが書いた物語を読んでいるように見えてしまうような時もあれば、自分自身の書いた言葉ではないのに読んでいるうちに心動かされてしまったように見える時もある。そこでは「朗読」という行為の繊細さが問われている。言葉を書いた人間と、語り継ぐ人間。双方が切り離せないかもしれない。とてもスリリングな試みなのかもしれないけれど、一切そうした不安や緊張は覚えない。さりげなく滅多なことで到達できない領域に達していると思う。 

『にじむ風景/声の辿り』小森はるか+瀬尾夏美 三浦 翔 | nobodymag

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