キアロスタミ『24フレーム』、24コマの1秒を2時間近くに引き伸ばした映画、というより4分30秒近い1フレームたち。その意味で『ホーリーモーターズ』と近い観点に立っている気がする。自動車の映画を撮り続けた作家にふさわしいのかもしれない。
主に動物たちが絵画・写真の中に迷い込む。動物たちの運動だけ見ていれば、より微笑ましく感じられたかもしれない。しかし彼らは写真の中にいるせいで、元の映像では何に驚き反応し、時に倒れていくのか、運動をやめるのか、フレームから出ていくのかはわからない。そして代わりに彼らの運動を意味づけるかのように銃声や落雷といった音がつくられる。おそらく彼ら自身知らない間にキアロスタミによってフレームの中で誘導される。虚実入り混じった演出家のマジックが発揮されていると思う。
最後、24フレーム目。デスクトップ上での「コマ送り」された映画が見える。そのコマ送りはフィルムとはまるで違う。そこにはかつてあったような機械の回転はない。コマはない。ただ滲んでいく映像たちの変化。その前で眠り込んでいる人。彼と観客としての自分は重なり合う。自分が日々、パソコンのデスクトップ上でウトウトしながら映画を再生した時も思い出す。しかしデスクトップの再生している映画はかつて劇場においてフィルムによって上映されていたものだ。デスクトップと映画館の捻じれた交錯を、眠りと窓辺が受け止める。