2024-01-01から1年間の記事一覧

『ヴィタリナ』(ペドロ・コスタ)

下高井戸シネマにてペドロ・コスタ『ヴィタリナ』を見直す。今回も修行足りず序盤ウトウトしていたら、なぜか途中入場してきた客が僕の席に座りかかろうとしてきたので一気に目が覚めた。その客の挙動が気になって少し集中できなかったが、ある意味コスタの…

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(トッド・ヘインズ)

水辺での焦点のボヤけた画を見ながら、一つ一つフィックスの画面に反して、カット同士の繋がりは『関心領域』のこともよぎって、ところどころ落ち着いて見れない。「ソーセージがない!」のズームと大仰な音楽から変だ。ホン・サンスが奇妙なズームをやめる…

『WALK UP』(ホン・サンス)

一軒のアパートのみを舞台に、あとは画面に出てこない済州島が気になる。ハングル一文字のタイトルが出て、文字の構造自体が映画そのものを現しているかもと錯覚する。 画面外についての映画という話も聞くが、『小説家の映画』同様、画面内にギリギリ全てを…

ヴァンサン・グルニエ特集@下高井戸シネマ

www.shimotakaidocinema.com 上映決定〈現代アメリカン・アヴァンガルド傑作選2024〉7/13(土)〜7/19(金)21:00日替り上映★13(土)、14(日)、18(木)上映後、西川智也さん(映像作家/キュレーター)と ゲストによるトークあり!現在ますます活況を呈しているアメリ…

『プロミスト・ランド』(飯島将史)

飯島将史監督『プロミスト・ランド』を見る。序盤は何故そのタイミングでカットして黒画面を挟むのか、編集の意図が掴めず、歯切れの悪い印象を受ける(役者も小林薫、三浦誠己、渋川清彦と見た人ばかり出てきて、あまりキャスティングに面白みは感じない)…

チャップリン『街の灯』『巴里の女性』『殺人狂時代』を早稲田松竹にて見直す。『街の灯』たしかにラストのチャップリンの手を触れて「目が見えるようになる」ことに、電流が走るような感動を覚えるのは変わりない。ただ女性の過ちに対してチャップリンが諭…

『フェラーリ』(マイケル・マン)

初日にマイケル・マン『フェラーリ』。今年で言うならエリセ、ベロッキオ新作と肩を並べられる、凄い映画だと思う(個人的にはホン・サンスも連ねたいが)。まず伝記映画と聞いて想像するモノローグなどなく、ただある日の朝の目覚めから始まる。しかしこの…

『胴鳴り』(楫野裕)

序盤からクーペを運転し続ける主役の古屋隆太に『月の砂漠』の三上博史を重ねたくなる。家族は捨て、テレビドラマの売れっ子脚本家という地位はありながら、そこに満たされているわけでもない。男は娘との再会をきっかけに新潟と東京を行き来する。パンフレ…

『違国日記』(瀬田なつき)

瀬田なつき『違国日記』を見る。原作未読。最初の交通事故は位置関係がよくわからなかった。葬式の演出は凝っているが、後々の主演二人の関係を考えると、もっと正攻法で見たかった。ドラマ上の距離感が掴み取りにくく始まった印象がある。脚本に書けてない…

『ロストケア』(前田哲)

gojoさんの記事を読んで以来、いつか見なくてはと思っていた『ロストケア』(前田哲)をようやく自宅で見る。暗く目を背けてはいけない題材だからか、余計に意外と普通な(というか同じ監督の『老後の資金が足りません!』とあまり変わらない)出来で、そん…

『だれかが歌っている』『左手に気をつけろ』

井口奈己監督二作を見る。長らく見返していない『犬猫』8ミリ版は8ミリとか自主映画とか関係なく立派な映画だったと思う。『だれかが歌っている』も始まってすぐは「なんだ、悪くないんじゃないか」と安心したが、場面が変わるごとに、『勝手に逃げろ/人生』…

日記 ベルイマンとユスターシュを見ただけ。

新作を見に行かないまま、エイゼンシッツの講義にも行けず、周りから映画を見る目も才能も努力もないとなじられるだけの日々が続く。周りの若手や同年代が羨ましくて仕方ない。努力をせずに皆から羨望の眼差しを向けられたい。それができれば悔いはない(凄…

上映会『私ももうじき四十歳』報告@キノコヤ

https://peatix.com/event/3964776/view?k=b736b6300d0d6d0c284a6b918708a426e950d5bf こちらに書くのを忘れていて上映会終了してしまいましたが、ご来場いただいた方、気にかけていただいた方、皆様ありがとうございました。 記録として上映した拙作と、そ…

『マッドマックス:フュリオサ』(ジョージ・ミラー)

ジョージ・ミラー『マッドマックス:フュリオサ』を見る。前作のほうが、より題材的に攻めてたかもしれない。だが今作のほうが、さらに落ち着いて構えて見え、140分以上の上映時間集中して見れた。冒頭の赤い果実をもぎとる光景からして、もう「マッドマック…

『マグダレーナ・ヴィラガ』(ニナ・メンケス)

ニナ・メンケス特集最終日に『マグダレーナ・ヴィラガ』を見る。以前国アカにて『クイーン・オブ・ダイヤモンド』見た際は大して何か書くことに躊躇しなかったが、もうすっかり「自分みたいな男が何か感想など言えるのか」なんてポーズを取りたくなってしま…

『関心領域』(ジョナサン・グレイザー)『エルサレムの家』(アモス・ギタイ)

ジョナサン・グレイザー『関心領域』を見る。あのセット内からスタッフ退出した状態という撮り方のせいかインスタレーションでもいけそう(だから駄目とは言わない)だが、監督のいう「ファミリードラマ」として見ると全然そうは思わない。国アカで見た「返…

『悪は存在しない』

濱口竜介監督『悪は存在しない』を見る。演劇や「演じること」について撮ってきた(とされている)作家が反動で、「コミュニケーション」不全というか、もう話の通じない世界をやろうとしたのか。現実に嫌というほど自民党や維新の会や、ジャンボタニシばら…

『三億円をつかまえろ』『喜劇 家族同盟』(前田陽一)

引っ越したわけでもないのに足の遠のいたラピュタ阿佐ヶ谷へ久々に行く。前田陽一特集にて『三億円をつかまえろ』。初見のつもりが、たぶん10年以上前にシネマヴェーラで見ていたんじゃないかと思う。その時は地味な印象だったが、意外と後半は金庫破りの映…

キノコヤ5周年記念映画『青い鳥』感想

https://kinokoya5th.peatix.com/ すでに予約で全回満席ということですが、キノコヤ5周年記念映画「青い鳥」の感想を書きます。 Aプログラム トップバッターの青石太郎作品(タイトル記載なし)は前作『手の中の声』に続き、屋外の樹々(バードウォッチング…

『ラブレス』(キャスリン・ビグロー、モンティ・モンゴメリー)『青春がいっぱい』(アイダ・ルピノ)

一か月以上更新できていなかった。 下高井戸シネマにて『ラブレス』(キャスリン・ビグロー、モンティ・モンゴメリー)。吉祥寺バウスの爆音オールナイトで『Helpless』『断絶』『悪魔のいけにえ』と一緒に見て残念ながら爆睡した一本だが、改めて見ても眠気…

『季節のはざまで』(ダニエル・シュミット)

ダニエル・シュミット『季節のはざまで』。オーディトリウム渋谷以来。どんだけ人を入れようが、がらんどうだろうが、カメラを動かそうが、エロい話になろうが(鍵穴のところなんか凄い)、精神病院に行こうが、全てにおいてちょうどいい距離を維持し続ける…

『ペナルティループ』(脚本・監督:荒木伸二)

前作『人数の町』は蓮實重彦がコメント寄せていたから気になって見た(安易な動機で申し訳ないです)。『人数の町』はなかなか面白かったけれどラストがどうなったか思い出せない。ただスッキリしない終わりだったように思う。『ペナルティループ』もかなり…

レニー・ハーリン『ブリックレイヤー』

レニー・ハーリン『ブリックレイヤー』を見る。仕事が忙しくなると「映画なんか見てる場合じゃない」と大半は後回しになるのに見てしまった。最終的には「見てる場合じゃない」映画かもしれないが悪くない。いや、本当はもっと良くも悪くも今つくられている…

フィリップ・ガレル『ある人形使い一家の肖像』

www.wowow.co.jp ルイ・ガレルがウディ・アレンの映画に出演したからと結びつけるのは短絡的だが、近作でのモノローグを用いながら男女関係の顛末を語るスタイルがアレンとガレルを意外と近づけているかもしれない(それ以上に異なる面を意識するべきだろう…

・国アカにて沖山秀子脚本・監督『グレープフルーツのような女』。序盤の雪山でのパンから何を見せられているんだと困惑するが、だんだんとヘンテコなエロ映画というより、役者の監督作として興味深くなってくる。彼が海外へ立つことが決まって、一人で我慢…

『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(監督:鎮西尚一 脚本:井川耕一郎)

鎮西尚一監督のフィルム上映に駆けつけないわけにはいかないと『女課長の生下着 あなたを絞りたい』を見にラピュタ阿佐ヶ谷へ久々に行く。冴島奈緒の役名は「小泉京子」、クレジットには「小沢健三」という役者の名前に94年らしさを感じる。舞台はほぼ窓際を…

サッシャ・ギトリ『トア』

劇中にてギトリは「政治には関心がない」「政治より演劇のほうが大事だ」と言うが、「政治も演劇も役者が交代していくのに変わりはない」と続き、「政治は演劇と同じだ」と話題に区切りをつける。作品全体の中で言えば脇道へ逸れたに等しいが、このような台…

『網目をとおる すんでいる』(清原惟)『手の中の声』(青石太郎)

scool.jp グループ上映会「発光ヵ所」の短編プログラムを見に行く。清原惟『網目をとおる すんでいる』(2018年)は5年ぶりくらいに見直したが、ほとんどどんな話をしていたか忘れていた。「住んでいる」と「澄んでいる」どちらともとれるタイトルと、川沿いに…

『すべての夜を思いだす』(清原惟)

予想していたよりもどう反応すればいいのか難しく、掴みどころがなく、壁のようなものを感じる。この捉えどころのなさを必要としている人々がいるのだろうと自分で言ってしまうと、本当にただ「興味が持てない」という酷な感想になってしまう。すれ違う人た…

サッシャ・ギトリ『ある正直者の人生』

サッシャ・ギトリ『ある正直者の人生』。ギトリの出番は前口上とモノローグ、ギトリ夫人のラナ・マルコーニは1シーンだけ。主演のミシェル・シモンはギトリからこのように頼まれる。「節約のために一人二役を引き受けてくれないか」ミシェル・シモンは二つ返…