ツイ・ハーク西遊記2』。
初っ端から見世物小屋そのものとしか言いようのない悪夢のような世界(ホドロフスキー石井輝男かという領域)がCGの有無関係なく繰り広げられる。しかし見世物小屋商売をやっている妖怪三人組と三蔵と小人とのふざけているというか殺伐とした掛け合いから一瞬ミュージカルになるところなんか『スキップ・トレース』(好きな映画だが)や『ラ・ラ・ランド』とは格が違う。映画の歴史も香港映画の歴史も全然わかっていないが、何やらそうした蓄積が映画全体に愚劣さを装いつつ気高い三蔵のような風格を与えているのだと思う。エログロ全開になりかねない蜘蛛女たちとの糸まみれの格闘での宙づりになる三蔵とか素晴らしい。
登場する圧倒的な美女全員が人間じゃないという恐るべき状況にあって、『人魚姫』(チャウ・シンチー)のジェリー・リンの披露する踊りは(正確に書けないし思い出せないがサイレント映画期からラング『大いなる神秘』の蛇ダンス、モンテイロ『ラスト・ダイビング』のサロメにまで行き着く系譜のような……、だがそれでいうと『黒衣の刺客』と比べて見劣りしてしまうが)妖艶さと可憐さとを併せ持っていて、その後の彼女の正体をめぐる諍いを三蔵と悟空(作品全体通してのケニー・リンの殺気だった佇まいも本当に素晴らしい)が引き起こすのに十分すぎるほど十分な説得力を与えてくれるほど美しい。彼女の正体を現すことになるCGが最後の最後のギリギリまで使わないよう引っ張るあたり、幽霊譚としての気品も漂う。CG全開の闘いにあって垂直に落下するヤオ・チェンも忘れられない。
そして三蔵法師の「私は本当は頭が良い」が今までいったい何を見ていたんだと眩暈。エンドクレジット後も含めて、舞台をひっくり返されたようなところがジャッキーではなくてジェリー・ルイスみたいにも思えて、やはりとんでもない。