『さらば あぶない刑事』(村川透)が、予想していた以上に良かった。特に浅野温子に泣かされるとは思わなかった。舘ひろしを挟んだ、横たわる奈々緒との切り返しによって、彼女が時空を超えてヒロインの座に返り咲いていた。

ともかく暗闇から二人の現れるまでの初っ端も良いけれど、吉川晃司の杖をついたままハイキックするサイボーグじみたアクションも格好良かったし(年齢不詳)、その片足立ちの仕草はこの映画全体を象徴している気がする。『漂流街』の死に様を思い出したことにも感動した。アミーゴ……。

グリフィスや加藤泰の名前を出していいのかわからない、お約束事かもしれないけれど、「残りの敵の数の弾の数が全然合わない」クライマックスに熱くなった。そしてこんな幸せそうな終わり方はなかなか味わえない。

柴田恭平が以前ほど動けないことをギャグにしながらも、そのことを「定年」という言葉以外ではほとんど感じさせる隙を与えないあたり、映画自体の余裕と困難が同居したような不思議な愛嬌ある佇まいにつながっている気がする。感傷に浸ることなく、かと言って見せ場の連続で疲れさせることもなく、途切れない運動。五日間というタイムリミットさえ緩やかに変化する(映画の夜も昼も長い)。ベテランだけが辿り着く境地だと思う。うまく言葉にできないけれど昨年の『マッドマックス』も思い出した。シリーズの最新作のようで、その流れとは関係なくても構わないような(その意味なら、むしろ『スターウォーズ』のほうか?)。