そろそろ我慢できず旧作を見直さないまま『トップガン マーヴェリック』。初っ端からどーなっちゃうのと、まさかタイムスリップして死んだ友人を救うとか?(バカな!)と思いきや、久々に実験して煤まみれになるギャグを見るとは予想しなかった。「考えるな、感じろ」ならぬ「ジャスト・ドゥ・イット」がファイト一発な感じで、なんだかんだ旋回して戻ってきた所から泣かせるし俄然盛り上がる。読書人に続き、これってウェルマン本格的に見るタイミングなのかもしれないが、ともかく前作について漠然とした記憶どころか、これは見てなくても別に無問題じゃないかと思う。照準がわかりやすい!顔がわかりやすい!腕立て伏せ!ルートがわかりやすい!驚くほど混乱しなかったし、いろんな空軍モノを見直す必要は感じた。それをヨシとしていいかはわからないが、とにかくさすがの出来だと思う。しっかしいつの話なんだろうか。何が問題か凄くわかりやすかったからトム様おろされたら生還できんだろとざわつく教室に共感(そんな上官もトム様の現役っぷりに、夜の雨降る窓を見ながら動揺を隠せない顔が露わに)。トム様の終盤の予想以上のイーサン・ハント化に(やはり走る)、過去のわだかまりも一気に吹っ飛んでツッコミ役というか相棒度合がグンと増して、なんといっても飛行機には機関銃。荻野洋一さんがいうところの「問わずがたり」っぷりも(イーストウッドの誕生日に見てしまった)、SMSのやり取りが意外に良い石井隆根津甚八のようなヴァル・キルマーも、前作の女優2名の不在も、デヴィット・ボウイも、ビーチバレーも、まあ、いろいろあるけどほとんど同じ感想しか言えないが。あとは『さらばあぶない刑事』がよかった村川透に、織田裕二と『ベストガイ』のリメイクをやらせてみるしかないとか……いや、そんなジジ臭いことをしてる場合じゃないが。

東京国際映画祭の朝一の回を夜勤明けに行って爆睡したホン・サンスの『あなた自身とあなたのこと』(2016)が配信されていたので見る。自宅だから様々な邪魔が入り、ちゃんとしたコンディションで見れたか自信はないが、一つ前の『正しい日 間違えた日』(2015)と同じく怒涛の(というべきかわからないが)感動の連続が待っている傑作だった。こんな傑作の上映中に寝てしまうなんて、本当にもったいないことをした。『正しい日~』があのキム・ミニ主演作だが、こちらのイ・ユヨンのほうが終盤になるほど、彼女の足が浸かる水や、その背後の草と同じくらい魅力的だったが、この種の一瞬一瞬の輝きをキム・ミニ以降も追うことを撮る愉しみにしているのは間違いないのだが。昼間から酒を飲むことは、白い酒を飲むことは、水や草と同じレベルに風を、あらゆる事象を受け止めて変化する自然の一つに化すこと……とかいうのは、それはそれでありきたりだが、そんなありきたりのことが堂々と繰り広げられる。酔っぱらい映画としても記憶喪失の映画としても『街の灯』『脱出』『ヌーベルヴァーグ』に連なる傑作に違いない。イ・ユヨン、いやこの映画通り、もう名前で呼ぶのはやめてしまいましょうか……。「酒を飲むなと言ったのがよくなかった」「わたしのすべてを受け止められますか」「敬語を使ってください」実はホン・サンスの役者の顔と名前が、漠然と見たことあるようで、いまだにだいたい一致しないのだが、それも作家性なのか、僕がいい加減なだけか。

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