『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(黒川幸則)

渡邊寿岳さんの撮影した映画は、その画から映画を語るとバカバカしい気分にさせる。「キンキンに冷えたビールをお見舞いしてやる」から「ナイステイクアウト」まで、正確にではないが妙に忘れられない言葉たちでもって、「良かった」というのも虚しくなる。それでも突拍子もなくナンセンスにではなく台詞として耳に届くときに映画を感じる。役者たちの動きが奇妙に速く予想外に見えても、「早い」映画だとは言えない。むしろ弛緩した時間が、ときにわざとらしく停止したふりをしつつ過ぎていく。顔芸のないジェリー・ルイスだろうか、コメディアンたちの映画として彼らの身体能力が撮られたみたいに見られて、しかも家の近所で一緒にいて面白い友人たちと二、三日で撮ってしまったみたいで楽しい……なんて思ってしまうと、別アングルからの画が挟まるだけで少し驚く。初めて見る只石博紀は相当におかしく、たしかに存在している説得力があるけれど、映画が壊れてるのかもしれない。異なる佇まいの三人の主な女優たちは映画に優しい(ピンク映画的なものを感じる)。飯島大介や園部貴一は、たしかに「向こうから話しかけられても答えちゃいけない」といった人々とはまた別に、影に隠れていながら映画を支えていた(それはこの映画から感じる黒川幸則監督の影に近い)。あの通り過ぎていく人々は、この映画から何か似たものを思い出してしまわないほうがいいんじゃないかという予感に近い。慎重に向き合わなければいけない映画だと思う(7/7追記:あくまでも、観客として)。