『怪談 呪いの赤襦袢』

記憶を失ったヒロイン浜崎真緒の夢見る女同士のSMから始まって、幽霊になった彼女と性転換した恋人(小坂ほたる)とのベッドシーンに至る。夫を名乗る男(野田博史)との行為は監視されていて、精神科医を名乗る女(加藤絵莉)が彼女の表情を分析、快感より苦痛を覚えているという。一方、夫と精神科医は裏で繋がっていて「男の喘ぎ声なんか聞きたくないから」と第四の壁を意識しながらセックスしている。ヒロインの「分間宮」というヘンテコな名字は「間宮」(黒沢清の『CURE』の記憶喪失の萩原聖人とか)の分家らしい。
なぜか抜け出せない空間、一人二役、二転三転する真相(?)。映画につきまとう雑さ、強引さが作劇に与える影響を、ある種の贅沢さが期待できない状況で二重三重に捻じれながら呼び込もうとする。野田博史が山城新伍のアレをやるのは『スウィートホーム』現場のエピソードが当然連想されるけれど、芸の継承なんてものじゃなくて、やはり無理があるんじゃないか、もはや悪ノリと何が違うんだとツッコまれかねない傷を残すと同時に、加藤絵莉が床の臭いをかぐ本気さと同じく記憶にも残る。小坂ほたるの声が男女の間を行き来して、登場人物たちの不安定な設定をさらに歪ませる。ただ確信犯的に破綻したどんでん返し(それこそ学生映画のノリかもしれない捻り)に引きずられて話が動くというより、赤襦袢を前にどうしたものか動けない『皆殺しの天使』的な置いてけぼりを喰らう。『ミッション:インポッシブル フォールアウト』の「アイム ウォーカー」も相当にブレていて最後はケロイドになるから浜崎真緒と通じているかもしれない。