小林耕平『あくび・指南』

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YAMAMOTO GENDAI

毎度のとおりなかなか楽しかったが、いつも渡邉寿岳撮影の「対話型の鑑賞記録」を見ていて笑えつつ眠気に襲われるので、タイトルになるほどとなった。『殺・人・兵・器』(だっけ?)もポンコツ永久機関となった展示品にはまって鑑賞者が死に至る、ある種のゴキブリホイホイ、蝿取り紙みたいな目的の装置が仕掛けられている(そして市販の置き型虫除け同様に効果の程は疑わしい)。ちなみに今回は昆虫ゼリーが重要な役割を担っているが、いずれも映像とともに弛緩した時間が経過している。催眠装置としての展覧会と、眠るための映画館の中間というか、どちらでもない空間。ある意味、遊戯場として半端な公園に寄った気分もするが、やはり一筋縄ではいかないカメラマンによる映像の力が観客を捕獲するための装置に思えてくる。渡邉寿岳の撮影はたむらまさき小川紳介、『ユリイカ』の長尺になくてはならない存在だったように、小林耕平と鑑賞者たちの予定調和とも即興ともつかない掛け合い、真剣とも冗談ともうまく形容できない会話と同調せずに見つめている。あえてギャグが決まらず常に反応は間に合わず引き延ばされてしまったような。渡邉寿岳さん御本人の笑顔をほとんど見た記憶がないが、小林耕平たちも笑わない。