2017年の大工原正樹監督作品『ファンタスティック・ライムズ!』『やす焦がし』は新しい境地を切り拓いていた。
演出・脚本ともに大工原正樹監督にしか撮れない映画であって、同時に『ジョギング渡り鳥』『ゾンからのメッセージ』など近年の鈴木卓爾監督作品における撮影・照明・録音スタッフが参加しながら、その製作方法を一部分引き継いだということだと思う。タイトな現場になればなるほど、そのジャンルの作品(アイドル映画だとか)が必要としている予算を満たしていないような画面の中で、ドキュメンタリーとドラマを行き来しようが、いきなりきつね憑きの話が始まろうが、テンションは断ち切らずに持続され高まっていき、映っている男女が芝居をしている、踊っていることに生々しさが増していく。映画となったライブに本番もリハーサルもない。公園だろうがステージだろうが、パフォーマンスはそれぞれ一回限りの、その場でしか見られなかった輝きを獲得する。いわゆる「ドッキリ」のような演出まで多幸感に満ちている。どちらも冬に撮られただろう作品だが、空気の寒さを画面に呼び込み、男女の求める熱が上昇して、芝居と物語の密度を増す。
そして何より30~40分という尺の短さが軽くて、タイトで、見やすい。この時間が男女の感情が高まって、駆け抜けていくまでを無理なく引き延ばし過ぎず、縛りを感じさせない。