jaIHoに滑り込みでミゲル・ゴメス『アラビアンナイト』の第三章だけ広島以来見直す。本当は一、二章も見たかったが一足二足先に終了していて残念。
初見ではあまりにオープンなエンディングに「これアリなんですか」とご一緒した方へ聞いてしまったが、改めて見るとこれはこれで後世へ語り継ぐ夢があるともいえるし、またシェヘラザードと父にも現在を生きる人物として見ることができた。
それにしても『アラビアンナイト』なのに引き篭もりの『コックファイター』というか、鳥の歌声を競う人達の話に移ってから、中原昌也さんが言うところの「雑木林映画」というか、でも樹々はあまりないから雑草映画というか……。誰が誰だかわからないというわけではなく、むしろ一目で印象に残る佇まいなのに明確な輪郭など与えられていない彼らと、さらに名前も観客にはよくわからない鳥たち(ついでに鳴き声の理屈はなんとなくわかっても判定の良し悪しも、そもそもどこで誰が鳴いているかも籠に幕がかけられてよくわからない)と、これから上映を控えているアレクサンドレ・コベリゼのジョージア映画に通じるというか(一方字幕だけの存在と化したシェヘラザードは沈黙と語りを繰り返す)。こんな野原で、落ちてきた空の精?をめぐっての360度パン&ズームに、最後のひたすら歩く人物に伴った移動撮影まで、やたら贅沢なのが凄い。

jaiHOにてアラン・ギロディー『ノーバディーズ・ヒーロー』。初っ端のセックスがテロ事件のニュース中継のせいで中断という展開に、別に誰のどの映画というわけでもないのに物凄く国映ピンク的なものを感じる。セルジュ・ボゾンの『ティップ・トップ』も佐藤寿保の『人妻コレクター』を元にしたとかしないとか言われているが、どこかこの荒んだ空気と日本のピンク映画が傍流で交わっているのかもしれない(もしくはゴダールがギロディーについて言う「左翼の敗北」ってピンク映画的なフレーズかもしれない)。ほぼ合間合間にセックスの中断があって『湖の見知らぬ男』の挿入とはまた別に溜まっていくものがある。青山真治監督が堀禎一監督の映画について「途絶」と書いていたが、何かしら共鳴するところはあるのかもしれないが。または『ル・アーブルの靴みがき』とミシェル・ウェルベックが混じったような映画というか。

花見に乱入する前に映画を見ようか悩んだ結果、やはり竹中直人監督『零落』に。それなりの好評に裏切られることなく見終える。石井隆・『無能の人』の話は確かに、だが斎藤工が僕の思う浅野いにおそのもので見事かつ終盤のアップには竹中直人その人のイメージも重なった。他も意外と好演のMEGUMIはじめ、総じて見事に浅野いにおの漫画で読んで不愉快なあれこれがちゃんと映画になってるという距離感だけで、ただただ感心した。女性陣への視線が決して褒めれたものではないかもしれないが、これはこれではっきりしているというか、その原作・主演・監督セットで視線そのものがはっきり映画になっていた。玉城ティナはちょっとよくわからないが。あとは趣里が山戸結希・福間健二両監督の映画と同じ役だが、それが浅野いにおを介して竹中直人の映画に出ることになるとは想像してなかったが、これまたちゃんとはまっていた。上映後に目の前を歩いていたカップルが浅野いにお原作を読んでいたらしく、どうもラストのサイン会で長年のファンに向けた一言に対して彼女から発せられるさらに涙ながらのリアクションが重要らしく、それをぶった切ってるのに納得いってないようだったが、むしろそこにはさらに関心したかもしれない。あそこで彼女から何かしらリアクション出ても、たぶん白けるだけだろう。