シネマヴェーラにて古川卓巳『逆光線』。
古川卓巳といえば特集でもされたらコンプリート目指して日参したい監督の一人なのに、たぶん名高い『麻薬3号』さえ見逃したままだが、やはり面白かった。しかし古川卓巳とは。『大学の暴れん坊』のラスト10分近く劇伴もなくメトロノーム響くなか格闘を続ける展開を見て以来、たんに面白いでは済ませられない魅力はあるに違いないと踏んでいるが(やはり既にいろんな方が名前をあげているというのは当然だが)。しかし名画座通いの映画獣からは程遠い人間なので、はたして他の日活のアルチザンと比べて特異な存在としていいのかはわからないし、そういう作家とも思えない(中毒描写が多いとは聞く)。たまにアマプラで不勉強から追ってこなかった日活アクションは見るが、古川卓巳の本数はなぜか少ない(フィルモグラフィ自体詳しくないが)。片っ端から誰の映画かもわからず見続ければ悟る何かはありそうで、しかし不精して(名画座通いを人生最大の娯楽にできるほどシネフィルになれないまま)よくわかってない。
『逆光線』も北原三枝渡辺美佐子のビンタとか、アル中はいないが北原三枝中毒と言わんばかりの男の惨めさをクールに突き放す。いや北原三枝渡辺美佐子の愛を欲する様も病のように見せる。ソ連映画風にカメラを傾けて切り返しもする(本家ほど凝ってはいないが)。コサックダンスもある。メトロノームに続き劇伴と異なる音の使い方とかも気になるといえば気になるが。犬や子供との戯れや、獣じみた側へ傾く人々に、フィル・カールソンやジョセフ・ルイスに匹敵する存在かもしれないが(ノワールとアクションの堺にいる立ち位置とか)、しかしそれを日本だろうがアメリカだろうが作家名に縛っていいかわからない。長谷部安春ほどサディスティックでもなく、鈴木英夫ほど痺れるのとも違う。この醜悪さ野蛮さに対するクールさ?が後世の映画たちにどれほど引き継がれているかは気になる。
ともかく古川卓巳はまとめて見たい。ついでに渡辺裕介とか、武田一成とか、関係ないが特集いつかしてほしい。
 
 
しかし『迷い猫』再見して、まずはサトウトシキ上野俊哉から改めて見直そうとなる。さすがに初見ではないが…ある時期まで追おうとしていたのに、何らかのタイミングからやめてしまっていた。