人の真似して梅崎春生を読み始めたが、最近読書長続きしなかったのが嘘のように読める。翻訳文学から先にとっつきにくくなるのか?とショックではあるが。
とにかく『つむじ風』上巻読了。徴兵されて上官になる道も進んで逃れて敗戦後は自ら無能な上官になって展望の見えない御近所大戦に巻き込まれる羽目に。松平家の自称後継も放射能の雨も降り、戦争は終わらない。

『白い牛のバラッド』「未亡人には部屋を貸せない」など告発すべき現状はあり、神の名を出して責任を取らない組織は腐ってる。しかしテーマは伝わるが、演出がわかりやすすぎるんじゃないか。許されないメロドラマであることを夫の兄弟から電話で罵られて言葉になるというのも、その際に買い物に出た男の側へパンして電話を聞く女の顔を見せないという演出もわかりやすすぎる。夫の写真と切り返すとか、カットバックもわかりやすい。扉の奥を見せないのも、最後は扉を閉めるので終えるのも、まとまりがよすぎる。別れの言葉の省略だったのか、二通りの解釈を残すラストもわかりやすい。死刑は断固許せないが、しかし判事の息子の死の話を繋げるのも、見え透いた話の進め方、ドラマの作り方だと思う。

番匠義彰特集にて『三羽烏三代記』。佐分利信がジェットコースターにのせられていて驚く。浦辺粂子桑野みゆき(『青春残酷物語』の前年)の組み合わせもおかしい。映像業界でバリバリ働く岡田茉莉子津川雅彦。これを愉快に声を出して笑える感性が自分にはないのか、なかなか集中して続けて見る気になれず、特集に通うかは怪しい。正直一ヶ月に一本のペースが限度かもしれない。娯楽映画の存在など否定できるわけがないけれど。まあ、もうちょっと主要キャストの絞られたものを見ない限りは何とも言えないか。