8/13

ネットフリックスにてジョニー・トー四作品が配信されている上に8/15までと知って慌てて見る。
『裸足のクンフーファイター』は主役が『天国の門』のクリストファー・ウォーケンみたいな(意識してるのか?)役割になるのが泣かせる。
『マッドモンク/魔界ドラゴンファイター』チャウ・シンチー三悪人の魂を救うために下界にてドタバタやる映画。特に前半は(単に最近読み始めただけだが)ジョージ秋山のギャグ漫画に近いかもしれない(『デロリンマン』ほどの悲壮感はないが)。ン・マンタの赤ちゃん演技が凄いが、彼の退場と入れ替わりにアンソニー・ウォンが出てきて何だか安心する。なんといってもマギー・チャンの娼婦がとてもいい。唐突に悪役がサタニスト(?)になったり『東方三侠』や『名探偵ゴッド・アイ』でも活躍するドクロが登場して、終盤に『東方三侠』と違ってオッサン四人のバトル(というかリンチ)も挟まれるが華はないのですぐに終わる。ラストは『ファウスト』の「愛!」(まあ、チャウ・シンチーの映画はよくやるが)を控えめにやる。予想より強烈で忘れがたい。
ジョニー・トーの映画で「食」が重要なのは当然だが、こうして見ると「毒を食う」という題材も繰り返され、それが食あたりとして便所や病院という舞台を呼んだり、より抽象的に捉えれば潜入捜査、不正に手を染める警官、贖罪行為に結び付くし、その毒は糞となって地獄や下水道の中まで人物たちを引きずり下ろしてから、逆転して浮上させることもあれば、便秘となって内部から破裂させもする。
ともかく続けて見るといろんなネタを毎度使い回しているんだろうと改めて思う。『ファイヤーライン』は『ホワイトバレット』終盤でも出てきた赤いホースが人物たちの命綱になって、生死の境の宙づり状態(地獄巡りというべきか)へ導く。

『愛に目覚めて』(ジョニー・トー)。タイトルだけ見て恋愛映画かと思ったら、刑事(ラウ・チンワン)と妻の再生についてのバイオレンス映画。でも最終的には「愛に目覚めて」としか言いようがない。やはり刑事が自らの失態を公に認めないまま終わる。何より刑事を執拗に狙う犯人のオーラのない見た目が凄い。
ついでに『PTU』も見る。別にこの監督に決まったわけじゃないが、一夜の話であっても何だかんだ前半・後半と緊張感が変わる。冒頭は携帯の特徴的な使い方としても一切先が読めないが、誰が考えても不良四人組を追跡する話のままにしたほうが盛り上がりそうなところを(それだと森崎版『野良犬』になってしまうが)老人二人の果し合いと、よくわからない強盗四人組が遭遇という、やっぱり微妙に不細工な側へシフトし、ラストは悪夢の覚めるような(そこがノワールなのか)妙などんでん返し。