アテネ・フランセにてワイズマン『インディアナ州モンロヴィア』。ワイズマン史上、最も微妙な評判の一本をついに見たが、既に自分の感想か人の感想の受け売りかわからないが、なるほど、なんともしんどいような、興味深くはあるが。ワイズマンのシニカルさも、ここではトランプ当選の余波として愛のない目で、先のない社会として荒野を見るような一本。ここにワイズマンの愛してない者たちへのこれまでの底意地悪く見せる辛辣なユーモアより、ただただ興味のなさが上回る。『シナイ半島監視団』の靴酒飲みの奇怪さや、『ミサイル』の何だかんだバディ物としての魅力や、『軍事演習』や『基礎訓練』のキューブリックなんか目じゃないユーモアや、『高校Ⅱ』の小学生たちの『我輩はカモである』のファイヤフライ的な身も蓋のなさもない。フリーメイソンに『エッセネ派』、冒頭の牛に『食肉』、犬の手術に『動物園』『霊長類』の虐待にしか見えない痛さはあっても縮小再生産のようで、そしてお馴染みの教会の説教も、それが事実なんだとして全く聞くのが辛いほど父権的かつ死者と関係なし。たしかにベケット的に同じことを繰り返すのが組織だとして、あの会議も明ら様に停滞しすぎて、まあ、わかりやすいといえばわかりやすいのだが、やはりそれは組織そのものの動きの鈍さとしてより、このモンロヴィアに向けられる醜さが上回る。それは近作のリベラルさとわかりやすく対になりすぎて構成上の魅力につながらない(と知り合いは言っていた)。だからエアロビが出てきたり、あの微妙な太った、大柄な白人だらけの世界にザイドル的な醜さ、停滞感が強い気がして、このシニカルさはワイズマンに求めていない、と誰もが思うに違いないでしょうという。ただオークションの早口や、車の変形とか、腐っても興味深くはあり、そんじょそこらのドキュメンタリーよりは作業の魅力もある。

『冬薔薇』を見てから出勤するつもりが、雨とか、連日の飲めないくせに飲んだ酒とか、酒や努力嫌いの怠けた僻み癖に負けて周囲の人を不快にさせた気分に負けて、自宅にて青山真治監督の『最上のプロポーズ』(2013)。BEETVをどうやって見たらいいのかよくわからなかったりしているうちに漠然と忘れてしまっていたが……。第一話『スノウドロップ』向井理升毅の掛け合いから楽し気に始まって、伊藤歩の不思議な花屋さんへ斎藤工が辿り着くまで、ありきたりな結ばれるまでの話にトントン拍子に引き込んでくれるんだろうと惚れ惚れする。だが伊藤歩斎藤工へ、花を贈りたい相手の美波について尋ねた途端、斎藤工が知らないはずの美波の学生時代を演じる平祐奈の顔が挟まれて、これは誰の主観としての映像なのか、そもそも映像は主観ではないということか?という謎が引き金になって、一気に映画に影のようなものを与える。終盤の斎藤工は無断欠勤までして何日あそこで待っていたのか?という話のおかしささえ、それが映画の面白さだと感じる。久々の雪はCGが混じっていて、そこだけ残念だが。第二話『アイリス』の一気に庶民的な定食屋のおじさんたちに混じって、金子ノブアキってこんな面白かったのかと知らなかった(というか、こうした伝統ある科学者のキャラがうまく嵌れば誰でも愛すべき人になるのか?)。お茶の間の人くらいの認識のムロツヨシもいい奴で非常に良い話を(自分のような怠け者が真面目に聞かなければいけない話を)する。終盤のホームの向かいの入山法子へのプロポーズも、あえて45度の入山の顔のカットの次が金子ではなく入山の正面へ繋ぎ、それから金子ノブアキは90度の横顔から撮られるという角度の変わるカットバックが入山目線の金子のカットだけは無くて、金子が入山へ向かってやってくることだけはない、入山が姿を一度は消すしかないと告げているのかもしれない。やはりこういう唐突というか普通じゃなさがボンヤリとは見ていられない。第三話『ブルーローズ』、いつもこの世にあると思えない不気味な青いバラだが、『犬小屋のゾンビ』や、後の『金魚姫』や、結局イメフォでも下高井戸でも見逃したままのドライヤー『奇跡』についての青山監督の、そこにヨハンネスが力を持っているということより少女と手を繋いでいることのほうが奇跡を呼び起こしている、といった指摘のことを思い出す。ここでは奇跡が起きなかったというべきか(ついでに『金魚姫』にて実現される水中シーンも、起こりそうで起こらない)。浅草デートがいい。第四話『ウェディングベール』にて、これまで観察に徹していただけの向井理が、悩める男のような、ひどくヤバい人のような、つまり人としてどうかと思われるかどうかの危ういラインを行き来する。伊藤歩も、ご多分に漏れず、周囲に不思議な力の持ち主と期待される人に相応しい不幸せな生きにくさを見せる。『エリエリ~』でも見たような水晶という球体の光も、まがい物だとしても価値がある。50万円しようが金魚鉢だろうが光があるのに変わりはない。通して一気に見たのは勿体ないかもわからないが、『東京公園』に近い話の進め方だと思えば間違ってないのかもわからないが、とにかく繰り返しこれも見なければと思う。