『ホイッスラーズ 誓いの口笛』(2019年 コルネリュ・ポルンボユ)

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コルネリュ・ポルンボユ『ホイッスラーズ 誓いの口笛』。『トレジャー』の金属探知機が口笛言語になる。音そのものが相変わらず面白い。なんか『未知との遭遇』みたいな音だと思っていたら、そんな感じで終わった(テレビだとエンドクレジットが小さすぎて全然読めないのだが、冒頭のトンネルを抜けた先の光の穴と併せて「大スクリーンで上映されていた映画なんだろうな」と気づく)。
マネーロンダリングを扱う点では『べレジーナ』を思い出すべきなのか? 原題は舞台になる『ラ・ゴメラ島』。ルーマニア語スペイン語と訳されながら口笛が遠く響く霞んだ山の光景が確かに(滑稽さとセットで)印象に残る。黒沢清が『旅のおわり世界のはじまり』のラストでシュミット引用しているのと同じ2019年の映画(オペラもこれまたレコードや車内から場違いに響く)。
麻薬の密売による資金がマットレスに入れられてモーテルから運搬される。監視カメラの前で取ってつけたように演じられるエロ。口笛言語も毒薬も使いこなすほどにアホらしくも見える(回りくどいというか)。習得するために水泳したりする面倒さも(渋い顔とセットで)笑える。だがこの口笛言語シルボはスペインの植民地となる以前に先住民のグアンチェ族が用いていたものであり(映画館にて『捜索者』を見るシーンもある)、どうもグアンチェ語ではなくスペイン語を組み込んで用いられている(ウィキで知った)ものをルーマニア語でわざわざ使う。先住民族の言語をルーマニア市街で犯罪のために用いる姿が映画のインディアンたちと重なり奇妙で面白い。なぜか西部劇の映画セットで撃ち合いになるが、撮り方そのものはタランティーノ以降という感じ。その口笛言語が恋人たちの通信手段となるときに、インディアンの言語としての美しさが宿る。
ロングの長回しによる不毛な時間をウロウロしながら消費するのがポルンボユの面白さだったかもしれないが、その時間の浪費はやや薄れているのが寂しい。最後にやっとウロウロしてくれるのは感動。