ランス・デイリー『リベンジャー・スクワッド』原題はアイルランド1847年のジャガイモ飢饉からBlack47。銀座シネパトスで見た『グッド・ドクター』が悪くなかった監督と覚えているが、そちらでははっきりとはなかったナイフによる暴力描写が地味ながらこれはこれで良い感じで、切り返しの銃撃も扉に穴をあけたり普通だけど悪くない(96分という短さといい『モンタナの目撃者』のように公開していたら評価されただろう)。地味な地獄巡りもよくて、特に開始早々、棺を節約するためか、埋葬になると底が抜けて土葬になる仕掛けが面白い。感化された少年兵が食料庫開放のために銃を向けるも、やはり無謀な試みは虚しく仲間もつかず蜂の巣となり、あっさり彼の挑戦などなかったかのように門は開かれる。その一連が妙に心に残る。あと追跡者の側に途中から同行する男もいい。火薬の使い方や少年の同伴とかジェニファー・ケント『ナイチンゲール』に質感近いが、あちらの後半の生死の境をさすらうこともなく、あっさり終わる。序盤に死んだはずの赤い服の娘と似た誰かが最後の最後に現れ、同じく赤い服の標的を前に決断を鈍らせて、そのまま終わってしまう(それを見る男が最初はジェームズ・フレッシュヴィル、最後はヒューゴ・ウィーヴィングと異なる)というのが、また『グッドドクター』の夢オチみたいな曖昧さと重なって作家性みたいなものなんだろうか。赤い服も『シンドラーのリスト』なのかもしれないが、『戦争のはらわた』の少年兵を意識してるのかどうか。『グッド〜』の撮影が検索したらヤーロン・オーバックでカーペンター『ザ・ウォード』を見たばかりだったから病棟に通じるものが?と思ったが、本作はデクラン・クイン撮影で、ジョナサン・デミが亡くなる前後の映画ということか。自宅のテレビだと暗くてわからないところも多い(特に幻覚めいた戦友同士の再会はほとんど見えなかった)からスルーは勿体ない。そして最近なら『ドライブ・マイ・カー』とか水俣の映画(『水俣一揆』を見直して、やはり標準語に対する水俣弁という面が、さらには妻や家族、親しい者しか聞き取れなくなってしまった患者たちの発声という面があるからこそ「座右の銘はなんですか」など強く響くのは間違いない)にもあるだろう異なる言語の持ち主たちというテーマにランス・デイリーも向かっていたようで、まだ次作がないのが非常に残念。