阪本順治『冬薔薇』、オクラ入りしかけたとしか思えないアンドロイド映画に続き、もしくはそれ以上にフラストレーションのたまる危うい映画。あと30分長くして因縁にケリをつけるか、100分のまま話の進め方を変えることも、明らかにあえてそうしない。そういえばアンドロイド映画も殺し屋映画も、話の全体像が見えるまでに映画の半分近くが過ぎていて興味深い。何より小林薫がいいとこなしのままで終わるのが凄かった。

石井隆の映画は好きだが、『死んでもいい』は好きになれず、でも『フリーズ・ミー』とか『花と蛇』とか見てないまま、石井隆の劇画も一冊も買わないままだった。だからファンとはいえないが、亡くなったと知ると、結局なにか言いたくなってしまうくらいには寂しく、最後の『GONINサーガ』でもフレッシュさのようなものが失われていなくて、新作が見たかった、いや、何か見返したほうがいいんだろうが、『ヌードの夜』といい『黒の天使』といいモノマネしたくなる椎名桔平とか(やはり『GONIN』がなければ『アウトレイジ』もないだろうか)、あとは鶴見辰吾とか伊藤洋三郎とか、『フィギュアなあなた』のワイヤーウエディングが綺麗といいつつ、『黒の天使』の葉月里緒奈のダンスとか好きだけど、それはあくまで感動というより奇妙というか唐突なものとして、でも相方の山口祥行のカタコトの日本語とセットでかわいらしく優しく記憶に残っているわけで(それ以上に天海祐希片岡礼子の『VOL.2』が好きだが)、まずは苦手な予感がして避けてきた劇画も『花と蛇』も見なければだろうが。