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親切な知人に録画してもらった山下耕作『現代神秘サスペンス 三階の魔女』を見る。どこが神秘?と思ってたら、さすが『いのち札』の監督といわんばかりの唐突に美学炸裂(かなりとってつけた感じだが)。小林稔侍の「コーヒーのみたいねえ」がそういかされるとは思わなかったが。刑事っぽさはかなり好きだが。山下耕作は『総長賭博』も『いのち札』も人が言うほど好きではなく(その気高い感じには惹かれるが)、当然『関の弥太っぺ』は泣かせるとして、中島貞夫脚本の『江戸犯罪帳 黒い爪』とか、選曲がヘンテコな『新黄金孔雀城 七人の騎士』のような初期作とか、笠原和夫脚本でも『緋牡丹博徒 鉄火場列伝』のどこか狂的な女性たちとか、70年代入ってからのヤクザ映画『山口組外伝 九州進攻作戦』(ラストの一言がやはり好き、脚本は高田宏治)、若山富三郎が凶悪かと思いきや笑えて切ない相棒になる『強盗放火殺人囚』とか、ショーケンが火を口に突っ込む『竜馬を斬った男』とかは好きだが、なにが一番のよさといえばいいか。上品さ? あと沼田曜一がなかなかの頻度で登場するのもいい。未見の映画だと『おんな刺客卍』(69年)というのが気になっている。

『三階の魔女』は緊迫感を煽りもせず冷めた調子で、小林稔侍の刑事や十朱幸代のカメラマンが妙にはまってるだけで見れるというか。何より北村総一朗のマザコン旦那が面白かった。照明に増田悦章(『弥太郎笠』はじめマキノ、山下耕作などなど多数)。

 

アンドレ・ド・トス『黒い河』をDVDで。先日『いのち短し』(妙な映画)を見たが、その無茶苦茶さを書いたTwitterを読んだら、もう少し見なければと購入済みのから探す。『黒い河』はいきなり新聞記事のアップから事故の存在が語られ、生き残りの娘の語りから始まる。犯罪の予感はプンプンするが、果たして事件なのか、彼女の快復までの話なのか、それとも幽霊映画なのか。そういうのはヒッチコックでもそんな感じかもしれないが······(結局治療の話に専念するラストの『いのち短し』がメロドラマなんだかも謎で異様さがさらに際立つ)。ともかく『狩人の夜』が嫌でもよぎる風景もあいまって、繋がってるのやら繋がってないのやら奇妙な画と音が続々と。それは経済的な問題か、人物と作家の精神面の不安の現れなのか。

 

ロバート・シオドマク『カスター将軍』も見た。僕が見てもわかるくらい、役者の動きでは繋げてなくて凄い。むしろ途中で見るのを止められないような繋ぎ方。敵味方関係なく容赦なし(字幕ないから余計何が何だか殺し合いしている感じは強まって見えた)。ラストはアンゲロプロスの『アレクサンダー大王』みたく食われたかと思った。
製作にアーヴィング・ラーナー(IMDBによれば一部戦闘シーンを演出)、脚本にバーナード・ゴードン(『空飛ぶ円盤 地球を襲撃す』とか『トリフィド時代』とか、アンドレ・ド・トス、ウォルシュ、ラーナーの映画も)編集にピーター・ペラシェルス(『フォルスタッフ』やラリー・ユスト、ラーナーの映画も)、撮影のチェチリオ・パニアグア(検索したらマリオ・バーヴァ『リサと悪魔』と『新エクソシスト』が目立つ)、美術はジャン・ドーボンヌ(オフュルス『輪舞』やドーネン『シャレード』)、ユージン・ローリー(ルノワールの『ボヴァリー夫人』からイーストウッド『ブロンコ・ビリー』まで)。IMDB見ただけだが、やはり作品の凄さに相応しいスタッフが集まっていて驚く。

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