25日

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『マスターズ・オブ・ホラー』(何度目? ややこしい)。ジョー・ダンテ編『ミラリ』は悪ノリの作品たちに挟まれると恐ろしく地味だが、見返したくなるのもやっぱこれだけ。リチャード・チェンバレンが狂気の整形外科医!と言われても『ドクター・キルデア』とか見たことないからなーと相変わらず置いてきぼり喰らわされる。
ヒロインが整形手術の合間に見る夢の中では、リチャード・チェンバレン医師が両脇の看護婦と三人並んで首を傾けニッコリ微笑みながら手を振っている。すごくアホらしいことをやらされているはずなのに、もはや笑うべきなのかわからない。彼女にとっての覚めない悪夢は、病院の廊下へ抜け出たとき本格的に始まるのだが、ここで相も変わらず画が傾ていることに、呆れるなんてことなく「そうするしかないんだ」と感動してしまうのは何故か。
いまさっき『マチネー』を見返して、我が国でも「Jアラート」で虚しく繰り返した姿勢を生徒たちが学校の廊下で強いられる時に、「こんなことしたって原爆から身を守れるわけがない!」と抵抗して連れていかれる少女がいて、それを頭を抱えた姿勢のまま少年が見ている時、カメラは傾いている。映画の恐怖と、現実に虚しく騙されることを選んできた光景と、そこでの不安と抵抗の見事な接続(ジョン・グッドマン演じるキャッスルもどきの監督が少年に語る、恐怖映画を見る解放感とも結びつく)。
自分以外は嘘つきと管理人ばかりの世界で廊下をさまよう悪夢。このオムニバスでもミック・ギャリスとデビッド・スレイドが陳腐に繰り返していることを(スレイドのは本当に酷いがギャリスの最後の女の子はちょっと良い)、ジョー・ダンテはカメラの傾きとともに語り続けていた。常連ベリンダ・バラスキーとクリーチャーの対面によって、ゲーッとなるしかないラストへ向かってハジける。