『エナモラーダ』『女隊長アングスティアス』

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エミリオ・フェルナンデス『エナモラーダ』(46年)。国アカの年明け一発目はハズレなし。
撮影は端正な画面だけでなく、アベマリアの響く中、初めてペドロ・アルメンダリスが教会を訪れた時の、天井まで見上げていく動きの大胆さにも驚く。じゃじゃ馬ヒロインのマリア・フェリックスの邸宅に革命軍将軍アルメンダリスが入れてもらえない、互いに扉を挟んでぶつけ合うカットの繋ぎ目を使った演出にもキレがある。アルメンダリスが打ち上げ花火で吹っ飛ばされてから、去っていくフェリックスの傍に彼の馬だけ走り去っていくロングを繋げるギャグも気が利いている。一方で画面外から狙撃された男の倒れるカットなど、序盤の緊張感があるからこそ男女の変化も胸を打つ。暗く沈んだアルメンダリスに対して、年配の男がマッチを差し出す場面など、愛と闘いの境の苦しみとして忘れがたい。
カット同士のぶつかり合いだけでなく、ビンタのシーンも印象深く、偶然だがジャック・ベッケルの映画のヒロインという印象も強いアンヌ・ヴェルノン101歳の誕生日(2025年1月7日)に上映されたのも縁を感じる。互いのビンタを通して、誰でも生まれは平等ではないというテーマが明かされる。恋を知った男女が愛と暴力の境で揺らぐ過程で、真の平等を求めて長き革命の闘いに目覚めていく。それは単に死ぬための闘いではないがゆえに、ラストの過酷な未来であっても男女を祝うように見える爆煙が胸を打つ。
なかなか二人が落ち着いて一つのカットに収まることはない。教会で男の語りを聞く内に女が態度を変化させるシーンでは、二人は同時に映されているのに、彼女の被るレースのために互いの顔は見ることができない。一方が教会を去る間際の振り向くタイミングの違いから、やはり互いに背を向けることになる場面のもどかしさ。男を包む影の深さが渋みを増していく一方で、3人組のギタリストが恋の歌を奏でる時の、彼女の美貌と詞が結びつき、その瞳自体が大写しになり文字通り目を奪う。
彼女への思いを隠すしかない牧師と将軍との関係性も外せない。将軍が三博士の画を光の元へ掲げるべきだと語り始める時に、キリスト教がローマにおける革命であったという話が当然よぎる。

続けてマティルデ・ランデタ『女隊長アングスティアス』。一瞬で彼女が成長する演出の白っぽい画面とか、あまりに瞬く間に「ビバラレボリューション」の掛け声で彼女がのし上がる展開の早さ、終盤の白壁をバックにしたアップなど、B級の魅力が詰まっている。字幕が読みにくかったのも相まって、よくわからないけど突き進んでいく勢いもある。『エナモラーダ』と同工異曲の2本立てというか。それにしてもフォードに通じるのか、どちらの作品も馬たちの存在は大きい。