1/10、1/12

1/10

恋の手ほどき』(ミネリ)と『ナイト・タイド』(カーティス・ハリントン)。

恋の手ほどき』母親が声だけというのを忘れていた。馬の走りだけでなくレスリー・キャロンの駆け抜ける姿を見れてよかったわけだが、猫を掴んで部屋をウロウロするのもいい。あとモーリス・シュヴァリエの黄昏時の「覚えてる」も何だかいい。それにしてもルイ・ジュールダンの行ったり来たりというか。終盤の夜の噴水の前で馬車にも乗らず声もなく影になっての、それでも高鳴り続ける音楽の異様さ。この誰の心理にも沿ってないのではないか(強いて言えば、それが映画のクライマックスに相応しいのだ、ということか)。ミネリにとって「結婚」というのもわりと繰り返される主題の一つだが、この「少女が大人に」というのはやはり見ていて無性に悲しくなる。

『ナイト・タイド』はニコラス・ウィンディング・レフンのところのロゴをフィルムで見れたのが貴重な気がした。『恋の手ほどき』を食後すぐだけど最後まで寝ないで見れた反動からか始まってすぐに意識を失い、しばらく集中できず。黒服の女の後を追ううちに建物の裏側へ回ると、一瞬にして表側とは異なる時間の流れる荒れ方が視覚的に伝わってくるのが見事だが、何より誰もいないが揺れているロッキングチェアの不気味さがいい。はたして誰が座っていたというのか。窓から後の展開に外せない人物の覗く姿が一瞬見えるのだが、一方で黒服の女はこの映画から謎だけ残し姿を消すことになる。気配で勝負する映画かと思いきや、ちょっと『マルチプル・マニアックス』っぽい出来事が……。

 

1/12

玉田真也監督『そばかす』。
撮影・照明が近年の高橋洋監督作や『ジョギング渡り鳥』などのあのコンビ(中瀬慧・玉川直人)と最初のクレジットで気づく。予告では全くわからなかったが、映画はもう明らかにこのコンビのルック。
このコンビに、この監督で、編集・冨永圭佑、音楽・松野泉というのが既に何本かあるのも調べてから初めて知った。
にしても『ザ・ミソジニー』と同じ映画館で見たんだな。この題材で。なんかおかしい。そのせいか鏡が出てきたり、ホテルで隣に座られたり、前田敦子の幻聴がしたり、窓越しの父親の部屋に入っても音が変わらなかったり、どことなく薄気味悪くおっかない。何が起きるんだか油断ならない。動かさないのかと思いきや動く撮影が何だかんだ面白い。
近年のザ・上演の映画化する高橋洋監督と、青年団出身の監督が同じルックを目指すことになるのも興味深い。

夜にサタジット・レイ『主人公』。