『ゲット・クレイジー』『おかしな求婚』

stranger.jp

12/29

チョン・ジェウン新作に感動した後にアラン・アーカッシュ『ゲット・クレイジー』を見にストレンジャーへ。
陽性の『爆裂都市』というか。『爆裂都市』をザッカー兄弟が撮ったような。と思ったら『フライングハイ』みたいにしろという製作側の要請はあったらしい。だからジャングルに行くのか。捻くれ心が邪魔をして、まあ、皆さんほどは楽しめませんでしたがよかったですよ、とか嫌な感じのことを言いたくなってしまう。なんだろう、最近自分はまた斜に構えるようになってしまった。とはいえ、さすがにルー・リードの佇まいは最後の最後まで一貫して素晴らしい。そしてガールズバンドのあまりに破壊的な元気の良さ。あとパンフにも指摘されていたがダイブシーンはどんなオリンピック映画よりも感動的に違いない。
しかしジョー・ダンテやアラン・アーカッシュの在り方はウィリアム・キャッスルとザッカー兄弟の間にあって最大の映画における良心といえばいいのか。
劇場の予告で『優しさのすべて』が流れて、つい「蓮實重彦が褒めてなければ、面白いと言っていたかもね」とつい斜に構えたワードが脳裏をよぎる。
それはそうとパンフに書かれたサトミンの序文は相変わらず斜に構えた要素ゼロの感動的な内容で、僕みたいな中二病には書けないのであり、そりゃサトミン人気は間違いないよなと、相変わらず嫉妬。読みながらどうしても『猫たちのアパートメント』を思い出してしまう。この「個人的」なことを抱えた人にとって、猫そのものを選ぶか、『ゲットクレイジー』を選ぶか、それは人それぞれというよりも、あくまで向こう側からやってくるのだろう。『ゲットクレイジー』は猫そのもののように言葉は通じなくても自由だ。こうした自律した異物(ルー・リードまたはマルコム・マクダウェルの「プロデューサー」それはもうあらゆるしがらみや情念、それにセクシーさも逸脱している)に絶望している人は救われるかもしれない。ちなみに男性器が意思をもつというのはヘネンロッターの映画もあってか「去勢」に近い印象受けるが、『猫たちのアパートメント』にも去勢の話は出てくる。あと「菊川のストレンジャー」という連載にも猫スポットの話が出てきて、これがまた『猫たちのアパートメント』のテーマにも通じるかなり面白い(と言うか予期せぬ方へ転がる)話で驚いた。

 

12/30

おそらく今年最後の映画館で見る映画がエレイン・メイの『おかしな求婚』で本当に良かった。とにかく最初からウォルター・マッソーを見てるだけでいい。『マイキー&ニッキー』のカサヴェテスは見ていて何だか苦しかったが、このウォルター・マッソーは本当に見ていて楽しい。エレイン・メイも可愛らしく、同時に終盤の生還してからの目つきは恐ろしい。あのわかりやすく色の違うシダが出てきただけで涙腺を刺激されるとは思わなかった。ワインの奇妙な飲み方を教えるレストランでの鏡の使い方(彼ら自身もグラス内にいるような)や、アテネ式の着こなしの修正にかける時間のしんどさ(これが『マイキー&ニッキー』の感じを思い出す)、ハリー叔父さんの笑いにラウル・ルイスばりの横顔のアップや、そもそもウォルター・マッソーの金銭感覚など、とにかく変な、一癖も二癖もある、何だったんだろうという映画ではある。