『川のながれに』

https://kawano-nagareni.com/

 

国アカでの『WiLd LIFe』上映後の青山組同窓会トークでも面白かった杉山嘉一監督『川のながれに』を見る(過去作は未見)。立ちこぎボードでのんびり行く映画かと思いきや、女性三人ぞろぞろ出てきてアラサー男子のモテ期映画になって人生激流下りになるのかと驚き、そこへまさかの「生き返り」と出鱈目スレスレでも実に落ち着いた、笑って泣かせる映画。編集も監督というスタイル。
立ちこぎボードの落水した人を主人公がややドライなくらい冷静に「自力であがってください」という序盤から、これは映画館で見れてよかった。カメラがパンしたりどんでん返ししたりしながら、その場にいると思わなかった人を出すのが面白い。イラストレーターの前田亜季(いい!)が川瀬巴水の画の聖地巡礼の際に、松本享恭を木の前に立たせてスケッチしながら会話しながら真正面の切り返しになって、最後は横からのロングになるのもいいが、その後にバーベキューを経て、長いスピーチの間のアイコンタクトもリズムも笑えるが、火を囲んでのカットバックはさらに自然と感動した。岡本喜八が助監督らに新年会で「円卓を囲む人たちの会話のどこにカメラを置くのが正解か」と問題を出したらしく、答えは忘れたが、青山真治監督のツイートで「そもそもそんな構図は面白くならない」か「そんなところに一箇所置いても面白くならない」と書いていた気がするがはっきり思い出せず、見つけられない。その意味で言うなら、本作はそうした囲んでのやり取りでのカットバックのバリエーションとしても、この物語の題材としても、どこか一箇所の答えなんかありえないんだという映画かもしれない。中盤までは諍いになるとカメラは動いていたが、父親と席を交えたあたりからはフィックスに落ち着く。小柴カリンという女優がかなりおかしくて、彼女の登場からニコニコしっぱなしだった。なんだか他にも出てくる役者のバランスもよくて見慣れない人ばかりだが楽しかった。そして俯瞰ショットの数々は『夏の妹』をちょっと思い出す光景に『ピラニア』の話(ジョー・ダンテの『ピラニア』はヴェトナムに放流されるかもしれなかった生体兵器がアメリカの河に誤って脱走して暴れる話だ)に至る。洗濯物を畳む時にもアクション繋ぎがあったり、どこまでも見逃せない映画。