『日本原 牛と人の大地』

国葬の日に足立正生の映画も(フォードやミレールの映画も)見ず、ポレポレ東中野にて好評の黒部俊介『日本原 牛と人の大地』を見たが、これは正解だったように思う。個人的には菊川で見た『ゴダールのマリア』のわくわく動物親子に続いて牛の出産(逆子で大変!)、監督のカメラが破水を浴びた上に蹴られるなんて冒頭から面白いけど、とにかく魅力的な人(この内藤秀之さんという方が「自衛隊と闘ってきた」と言われても失礼ながら結びつかないというか、場面によっては忘れてしまうほどほぼ穏やかな面ばかりで、しかしベトナム反戦運動の抗議集会にて警察からの暴行で殺された友人・糟谷孝幸さんの50周忌の集会で東京に向う姿など闘志は失われていない)、その人たちの繋がりと、その循環を示すモノ(天皇が飲めて庶民の手には届かないなんてあってはならないと作られた低温殺菌牛乳『山の牛乳』はもう売ってないの残念)、日本原という場所の奇妙さ(普通に演習場の中で芋掘りとかしているが、急に日米合同軍事訓練だとかで入れないと自衛隊が言ってくるが、背景には安倍政権の採決した、菅政権下での土地利用規制法の21年からの全面施行がある)、そして牛の肥(ウンコ)を発射して走る車のスピード感が短いながら無茶苦茶面白かったり、元気な合鴨が競争するかのように田んぼを泳いだり(もちろん食肉になるシーンもある)、一々見ていて飽きない。何よりほぼ主役の内藤一家の次男、陽さんの語りが(カメラ片手に聞こえてくる監督の質問する声とも近くて、分身のようにも思えてくる)映画を入り込みやすくしていて、すっかり愛おしくなってしまった。映画それ自体が勿論魅力的だが、日本原をめぐる正直映画だけではよくわかっていなかった背景や、特に黒部俊介さんという人がどんな方なのか伝わる黒部麻子さん・編集の秦岳志さんの話など(お二人の貢献も大きいに違いない)充実したパンフレットを読むと、さらに好きな映画になっていく。必見。

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