河瀬直美のオリンピックは見る気になれず、是枝裕和の『ベイビーブローカー』を見る。予告を見る限り夏の映画っぽいから、異常気象真っ只中の東京に相応しい気はしたから、その辺の売るセンスがやはりあるかもしれない。そして相変わらずメシ(辛ラーメンとか)とか子どもとか(しかし都合よく存在感消せる赤ちゃんだなあとか、育児経験なしの人間が言うべきではないだろうが)台詞とか(同性愛の話とか気が利いてますなあとしか)撮影とかでこちらの心を釣ろうとしてくる。「生まれてくれてありがとう」はないわあ、と思ったが(「産んでくれてありがとう」にしないだけマシなのか?)、こっちの気持ちが乗ってたらボロ泣きだったかもしれない。でも乗れない。演出がわかりやすいから? ミルクのくだりで胸元に手をあてるのもわかりやすい。そのうえラストはボンヤリしてる。ソン・ガンホカン・ドンウォン(さすがに星野源に見えすぎる)が拳を当て合うところで軌道に乗るけれど、イ・ジウンをめぐって衝突させそうで、まあ、やはりしないのがウケるんだろう。一向に人物そのものにも興味を持たせてくれない。ただボンヤリした話だけ。新幹線の暗くなるところでのイ・ジウンとか仕掛けがわかりやすすぎて萎えるが、まあ、でもイ・ジウンはたしかに魅力的だったが、彼女と赤ちゃんをめぐってもっとあれやこれやぶつかり合ってぐちゃぐちゃになるもんじゃないの映画ってさあ(露悪的に書いてしまったが)。そしてアメリカの最高裁中絶権違憲判決という酷い事態のなか見ると、アクチュアルなようで、「産んで捨てるより、産む前に殺す方が罪が軽いんですか」は、やっぱ簡単にドラマにしてないか? まあ、簡単に感想書いてる人間の言うことではないが。