2200円高いな…と思いながら六本木まで行く予定もなくボヤボヤしていたら楳図かずお展が残り一週間になってしまった。なんだかなあと思いながら、やはり新作は気になるため見に行く(ちなみに図録はまだ出来ていず送料込み5500円)。
高いと文句言うかどうかはともかく新作『ZOKU-SHINGO』は文句なしに面白い。熱心な気合の入ったファンではないし『漂流教室』は漫画喫茶で一回読み通し『まことちゃん』なんか一冊で挫折した程度だが、それでも単に画伯としての才能だけでなくストーリーテリングの面でも、101ページ、103コマといえばいいのか、そんな短さでも老いてこその境地に達した語りなのか、それでも何かに追われる恐怖も、緊張感も、グロテスクさも衰えはない。美術館で後ろから来る客のペースに合わせながら一枚一枚追われるように見る(読む)のもいい。みんなで夢中で読んだ気になる。『わたしは真悟』の続編には違いないし、さすがに読まないで見に行く展示でもないが、むしろ『14歳』の主題をぶち込んだ集大成の魅力に近いかもしれないし、加筆された『14歳』最終回の色彩とタッチが引き継がれているのもわかる。「人間」への願望も愛憎も、終末の光景も、不老不死を求めるエゴの塊の老女も、遠く離れた距離からシンクロしあい助けを求め合う少年少女も、大嫌いなはずの虫たちを書いてしまう恐怖と対峙する衝動も、何より単に力尽きただけなのかもわからない微妙に寂しい終わりにもブレがない。

国立映画アーカイブにてジャクリーヌ・オードリー『オリヴィア』。
同性愛を正面から扱った映画には違いないが、まさに「百合」としかいいようのない世界が女子校を舞台に繰り広げられる(同性からのモテ具合の宝塚的な感じといっていいのか)。仮装パーティにて自らに思いを寄せる生徒へ「今夜あなたの部屋に行く」と言ってきて一晩姿を見せない先生は「悪い大人」!かもしれないが、とにかく描き分けの豊かさ、ほぼ全員の佇まいがいい。あっけない結末だが、それが一番ふさわしいと思う。とても良い映画。