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小川プロ特集にほとんど行かなかったため(まだ後半戦ありますが)、自宅にて『クリーンセンター訪問記』。実は三里塚よりも前に見て、小川紳介本人がマイク片手にインタビューして回るオモシロ映画として漠然と覚えていて、よくわかってないくせに何だか好きな映画としてインプットしたままだった。ことあるごとに困ると『クリーンセンター訪問記』と言っていて、いま思うと失礼なこともした。『ドライブ・マイ・カー』さえ『クリーンセンター訪問記』かな?と言うくらいだった。
だがこうして久々に恥ずかしながら再見したところ、こんなに良い映画だったっけ?というくらい良かった。最初に見るべきではなかったかもしれないが、それでも何が何だか最初から最後まで凄い『辺田部落』を経てからの魅力的な小品。いや、小品というのも失礼なくらい広がりのある構成になっている。照れ笑いばかりの橋本さんはじめ、最後の記念撮影まで全員顔も良いし、訛りの強い喋りまで魅力的に聞ける。そこで単なるクリアさには背を向けても、わけのわからないほど近い距離や暗い画が撮られることもなく、塵の質の違いや、分別されていない缶やビニール袋(分別はしなきゃダメ)のことが印象に残る作りになっている。ゴミ収集にはじまり、山林をバックにそびえ立つ煙突、そこで煙の具合をトランシーバーでやり取りする作業員の方々。これこそルノワール的といっていいのか。人、モノの運動と流れを解き明かし、一つ一つの作業が従事する人のナマの姿と共に記録され、分別されなかったゴミの焼却は煙になって近隣住民のもとへ届いてしまう。作業員の中には職業差別を答える人もいれば、結婚願望のある若者もいて、夫婦で働いている方もいる。それらをナレーションではなくマイク片手に接近することで、うまく答えられなかったり、小川の問いに引っ張られているように見える時も含めて、非常に素朴な姿がさらけ出されている。それでも彼らを追っていくうちに社会の繋がりが明かされていく。