高橋洋脚本・監修『うそつきジャンヌ・ダルク』三部作。高橋洋の監督作は第三部のみ。第一部、二部もちゃんと面白い。
第一部(監督:福井秀策)、光射す野原を歩くヒロインのアップから、その背景の光源がプロジェクターによって投影された映画美学校の一室での舞台上演とわかる最初のショットが導入部として素晴らしかった。スタッフが舞台に上がって殺される端役になる仕掛け、今回の脚本家(舞台の作家)としての高橋洋の発想元はロッセリーニ(ラドゥ・ジュデと同じく、これまたマスク映画)経由のポール・クローデルっぽい何か(高橋洋は『繻子の靴』を見れたのか)、しかしアクリル板のガタガタやってくる感じは井上正昭さんのTwitterに出てきたフリッツ・ラングヒッチコックの撮り方の音もなくやるのではなく、あくまで「ガタガタ」いう音が一々するのが面白い。
第二部(監督・脚本 倉谷真由)、砦のすぐ下との罵り合い(敵兵の主観かと思いきやカメラを持ったスタッフが巻き添えで死ぬドキュメンタリー的?な展開)からイントレを用いた戦闘場面へ移行し、ジャンヌが返り血を浴びるまでの冒頭5分。戴冠されるシャルルのみっともなさ、騙されているとも知らずカトリーヌを助けに行くジャンヌ。最もシスターフッド的ともいえる?
第三部(監督・脚本:高橋洋)。やはりジャンヌは火刑の前後に「あの世」を見る。大和屋竺高橋洋的というか、ここは自分で監督やってもらわないと困るパート。第一部にも登場したイザボー・ド・バヴィエールの肖像がコティングリーの妖精みたいに大活躍、「ぴえーん」なのか何なのかクセになる鳴き声を発する。この辺の(多感な時期に日本のテレビ黄金世代を見てきた力なのか)センスがやっぱり面白い。