5/23 『エノケンの頑張り戦術』『東海道弥次喜多珍道中』(シネマヴェーラ)『青春残酷物語』(自宅)

シネマヴェーラへ。
中川信夫エノケンの頑張り戦術』。またしても一つの画面を真っ二つにしたようにライバルが隣同士の空間に現れる(これも今となってはスプリットスクリーン的に見えなくもない)。今回はエノケンが張り合うほどマイケル・スノウばりにカメラが←→するわけだが(題材は時代遅れにされても、映画はあの手この手で時代を結果的に先取りする)、ラストにはスクリーンプロセスの車窓へ落ちた相手が再び走って戻ってくるのも妙(これまたスクリーンに飛び込んだように見えなくもない、と書くとキートンになってしまうが)。本当にいろんなことをやっている。
由利徹南利明の『東海道弥次喜多珍道中』はほとんど期待していなかったけどネタになるかと見たら、結構面白かった。というか、この二人はじめ、ただただ軽い感じが相当いい。石川五右衛門毒殺の件が一番好きかな。本筋といえば本筋だが終盤のアラカン登場からコンビが脇に消えているあたり、(荒木又右衛門から桂小五郎へ時空を飛び越えるあたり)ブニュエル『銀河』を思い出したと言ったら、まあ、言い過ぎというか、だがその辺のピカレスクロマンというか(よくわかってません)、デタラメさが何だか勉強になる映画。

 

自宅にて『青春残酷物語』を見直す。アクション繋ぎにせず、アクションごとに切ってしまうような。大島のカット尻の短くなる割り方は滑らかに繋げさせないけれど、こうして自宅で見たときに途中で止めることを阻む効果がある(そもそもそんな見方は許されないんでしょうが!)。あえて繋がらなってしまうかもしれない撮り方で映画をぶつ切りにしてしまいかねないところで、実は最後まで持続させる(そこに編集・浦岡敬一の真価を発揮させているのだろうが)。刑事が川津祐介の拳を掴むところと、桑野みゆきがシケモク吸って煙の少しだけ漂う時間が今回は印象に残る。
夜の通りを桑野みゆきの横から川津祐介がジャンプカットで消えて、片や佐藤慶らにボコられ踏みにじられ、その呻き声が乗車してしまった桑野みゆきを振り向かせる。こんなの青臭い演出かもしれないが、なんだかひどく感動してしまった(聞こえないはずの声が壁を越えて届いてしまう演出は今後も繰り返される)。これこそ本来繋がらなくなってしまったかもしれないもの同士を繋げさせることなんだろうか。彼女にはもう車から飛び降りる以外の選択肢は残されていない。
桑野みゆきの赤い傘といい、大島の映画が手に出来た色彩感覚を見ていると、『私のベレット』のヘンテコ具合を見直したくなる。