DVDで『ザ・バッグマン 闇を運ぶ男』(デヴィッド・グロヴィック)。キネ旬の星取表で筒井武文監督だけ☆5、他の選者が☆1つけた映画。同じ星取結果の『バイオレット&デイジー』(ジェフリー・フレッチャー)とどことなく似通っていることに驚く。どちらも長編監督デビュー作。

『ザ・バッグマン』のそれ自体予想をたいして裏切らない事件の真相も、任務に従って辿り着いたはずの密室とその周辺で起きる各々の出来事の繋がりが見えにくく、ジョン・キューザックの行動はほとんど夜に限られ、わざとらしく奇妙な人物の考えの見えにくさも彼を孤立させ、時折挟まれる(デ・ニーロが搭乗していると思われる)飛行機のカットも機能しているのか、いつの間にか迷宮へ入り込んでしまった感覚に陥る。何度も手を撃たれる彼の不憫さも滑稽。

レベッカ・ダ・コスタの設定は、物語上の都合の良さや破綻を指摘するより、それに合わせたジョン・キューザック自体の役割の変化によって、最終的には死にかけていたはずの二人のハッピーエンドへ繋がっていくことが重要だと思う。コスプレとして楽しむこともできた(投げナイフ!)。

モーテルの管理人がクリスピン・グローヴァ―という時点で怪しくなり、ジョン・キューザックの借りた「13号室」の扉を青い髪の「ワンダーウーマン」に扮した娼婦と思われる女性が出入りし、小人と大柄の黒人コンビの登場でさすがに確信犯だと気づく。銃撃戦で引き締まる演出(特にドミニク・パーセル扮する保安官たちとの取調室のドアを介した撃ち合い)もよく、バッグを埋める墓地がロバート・デ・ニーロとの対峙を引き立てる舞台として魅力的。