『せかいのおきく』『独裁者たちのとき』『アルマゲドン・タイム』『それでも私は生きていく』

阪本順治監督話題のウンコ映画『せかいのおきく』を見る。先日自分という人間にはつくづく「せ」とつくものが欠けていると思ったが、なんとこの映画も「せかい」を始め、真木蔵人が「せ」のことでウンウン堂々巡りしていて大変感動した。もう声の出ない黒木…

『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『イーオー EO』

金子由里奈監督『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を見る。ロバ映画ではないが、ぬいぐるみの主観ショットはある。自分が20歳くらいの頃に聞いた、台詞に「ちょっといい?」などのエクスキューズが入ったりすることで芝居が遅く長くなる、という話を思い…

デヴィッド・ロウリー『ピーター・パン&ウェンディ』など

住本尚子さんの短編を見に行く(『ふゆうするさかいめ』はすみません、何度も見てるので……)『オとセとロ』は最終的にタイトルまんまというか、白と黒と、その繋がってるのか何ともとらえどころはないが、ある意外とキツい場面および何とも触れがたい省略を…

『上飯田の話』(監督:たかはしそうた)

たかはしそうた監督『上飯田の話』を見る。上映時間わずか一時間と少し、しかも三つの話に分かれているから仕事終わりなど疲れた頭で見るのにちょうどいいかもしれない。しかしオムニバスと言い切るには単純に繋がりがあるから引っ掛かるというより、そもそ…

『トリとロキタ』『京極真珠』『ダークグラス』『ノック 終末の訪問者』

ダルデンヌ兄弟の新作くらいは今を生きる人間の務めとして見なくてはと『トリとロキタ』。そしてやはり呆気ないまでに簡潔な結末。自分の感受性のなさに絶句するほど、なにかボンヤリ見てしまったのも事実だが。反芻したり、人の感想を読んだりして、そこに…

『くせのようなもの』(2020)『ハル、さるく』(2021)佐伯美波監督作品上映会@キノコヤ

佐伯美波監督作品上映会@キノコヤにて『くせのようなもの』(2020)『ハル、さるく』(2021)の二本を見る。『くせのようなもの』は撮影現場の合間に助監督から自作の脚本の相談を受けた監督が、遠方に見える今は使われていなそうなバス停に座って佇む老婆に…

jaIHoに滑り込みでミゲル・ゴメス『アラビアンナイト』の第三章だけ広島以来見直す。本当は一、二章も見たかったが一足二足先に終了していて残念。初見ではあまりにオープンなエンディングに「これアリなんですか」とご一緒した方へ聞いてしまったが、改めて…

国立映画アーカイブにて『眞人間』(監督:伊奈精一)『野口英世の少年時代』(監督:関川秀雄)。『眞人間』はラング『真人間』の翻案のはずが、しかも50分と短いのに随分と間延びした展開で猛烈に眠くなる。ラング版クライマックスのヒロインが泥棒達に講…

ジョージ・ミラー『アラビアンナイト 三千年の願い』

予告ではテリー・ギリアムの映画みたいと勘違いして興味わかなかったが、ティルダ・スウィントンの主演作としてアピチャッポン『メモリア』見たのか?というくらい彼女の佇まいや、そもそもやたら低音が効いているあたりに感じる。しかし個人的には『メモリ…

サッシャ・ギトリ特集②

サッシャ・ギトリ『王冠の真珠』これまで見たギトリの中では最もアラン・レネに近いかもしれない複雑さでもって、過去や異国を行き来していくわけだが、しかしレネならやらないような「それ本当に繋がってる?」と初っ端から言いたくなるヘンテコさ。ファー…

サッシャ・ギトリ特集に通い始める

サッシャ・ギトリ、フェルナン・リバース『幸運を!』を見る。 まさに見たら良いことありそうな映画。 「幸運を!」(Bonne chance!)の声が、声をかけられたヒロイン、ジャクリーヌ・ドゥリュバックが聞いたのか、単に脳内でリフレインしているのか、ほとん…

2/18~3/10くらいまでの映画日記

ポール・バーホーベン『ベネデッタ』を見る。好きな監督のつもりだが『エル』のことは正直あまり覚えていない。エログロ版『修道女』だろうと(随分待たされたせいか)なんか想定の範囲内の題材と高を括っていたが、初っ端の賊が○の○で退散する展開から、こ…

神保町シアターにて澤井信一郎監督作品を見直す

www.shogakukan.co.jp 澤井信一郎特集スタートしているのに乗り遅れて、二週間逃す。随分久しぶりの神保町シアターにて澤井信一郎監督『福沢諭吉』。哀川翔のことしか覚えてなかったが、火野正平もなんかよかった。男だらけの話だが女優が出てくると一気に色…

『花つみ日記』(監督:石田民三 脚本:鈴木紀子)

国立映画アーカイブにて石田民三監督『花つみ日記』。再見のつもりが、たぶん恥ずかしながら何一つ覚えているところなく、おそらく見たことなかった。仲良しの高峰秀子と清水美佐子は一緒に刺繡を編んで葦原邦子演じる先生へプレゼントをしようと約束したの…

『コンパートメントNo.6』と『小さき麦の花』について

www.kinenote.com ここで須藤健太郎氏は『コンパートメントNo.6』を主題の面で批判していて、『小さき麦の花』をショット(「映画の原理」)という点で評価しているのだろうけれど、『小さき麦の花』の知的障害のある妻であったり、血を売らせたり、強制移住…

2/12 リー・ルイジュン『小さき麦の花』ユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』

リー・ルイジュン『小さき麦の花』一部高評価を聞き見に行くが、国際映画祭にて評価されたアジア映画(中国映画)という型の退屈さをどうにも超えるものには見えず(要はフィルメックスで見そう)、きつい。収穫やレンガ作りに中国には見えない画面の力とか…

2/4 『カロクリサイクル 展覧会 語らいの記録 2011-2022』、AFAアニメーション短編集、『きゅうり畑のかかし』、『ジェイソンの肖像』、『襲われた駅馬車』

www.3331.jp 3331にて『展覧会 語らいの記録 2011-2022』。この時間しか行けず、いくつかの書籍に目を通したのと、映像は一作品しか見れず残念。震災11年後(2022年)を機に作られた、現在は仙台在住の人々それぞれの11歳の時の記憶を、話し手の生年ごとに一…

2/4

モフセン・マフマルバフ三本をアテネフランセにて。『パンと植木鉢』は改めて傑作だと思う。カップルの犯罪者(フリッツ・ラングからケリー・ライカートまでアメリカ映画的といえる)を連想させる少年少女(もちろん彼女が黒のヒジャブを身につけていること…

2/2

国アカのサム・ニューフィールド『草原のハーレム』は記録的寒波の日に一気に眠気に襲われダウンした上に、目が覚めてる範囲も「漫才か」「低予算だな」くらいの印象で済ましてしまったのだが、今日アマプラにある同じ監督の『空飛ぶ翼蛇』を見たら、これが…

トマス・グティエレス・アレア『悪魔と戦うキューバ人』(71年)

『理大囲城』を見た時に『レボルシオン 革命の物語』がよぎって「そういえばトマス・グティエレス・アレアの映画をどこかで上映するな」と思い出したら、結局この国立映画アーカイブの上映だった。ユーロスペースでの『低開発の記憶』上映をはじめ、ケイズシ…

2022年邦画ベスト(仮)

2022年邦画から10本選ぶなら『にわのすなば』(黒川幸則)『日本原 牛と人の大地』(黒部俊介)『川のながれに』(杉山嘉一)『背』(七里圭)『弟とアンドロイドと僕』『冬薔薇』(阪本順治)『AKAI』(赤井英五郎)『ケイコ 眼を澄ませて』(三宅唱)『ザ…

1/25

24日の夜から尋常じゃない冷えが襲ってきて油断していたからしんどかったが、25日も予定があり外出したが、外で10分立つだけで寒さが辛く、信号待ちさえきつい。頭が働かなくなる。 ドン・シーゲルをやはりスクリーンで見ようと決めたが、時間間に合わず予定…

1/24

バッド・ベティカー『決闘コマンチ砦』を見直す。ダグラス・サークのインタビューに出てきた、マーティン・リットにはない新しさ、古びなさとは。インタビューでは『八ド』の名前をあげていたが(そこには「いとしのクレメンタイン」を映画館で歌う、何らか…

1/22

国立映画アーカイブにて『ザ・パーソナルズ 黄昏のロマンス』(伊比恵子)『予備選挙』(ロバート・ドリュー)。ポレポレ東中野へ移動して『理大囲城』(香港ドキュメンタリー映画工作者)。同じお客さんを見かける。『ザ・パーソナルズ』「息子が亡くなって…

『クイーン・オブ・ダイヤモンド』(ニナ・メンケス)

www.nfaj.go.jp vimeo.com Watch QUEEN OF DIAMONDS Online | Vimeo On Demand on Vimeo 国立映画アーカイブにてニナ・メンケス監督・脚本・撮影・編集『クイーン・オブ・ダイヤモンド』名前はたびたび聞く監督の映画をようやく。編集には主演のティンカ・メ…

『ピアニストを待ちながら』(監督・脚本 七里圭)

www.waseda.jp 早稲田にて七里圭監督・脚本『ピアニストを待ちながら』を見る。今回は高橋哲也が撮影ではなく照明、撮影は渡邉寿岳。劇中劇の照明(とピアノ)をほぼ主役の井之脇海がやってる設定というのが光と影の七里監督作らしいかもしれない。つながっ…

1/10、1/12

1/10 『恋の手ほどき』(ミネリ)と『ナイト・タイド』(カーティス・ハリントン)。 『恋の手ほどき』母親が声だけというのを忘れていた。馬の走りだけでなくレスリー・キャロンの駆け抜ける姿を見れてよかったわけだが、猫を掴んで部屋をウロウロするのも…

『ブードゥーマン』(または『アンニー可愛や』のこと)

『アンニー可愛や』(25年)がよかったウィリアム・ボーディンの『ブードゥーマン』(44年)がアマプラにあったので見る(既にブロードウェイのDVDが出ていたのも今更知る)。なんと主役がB級映画専門の脚本家という設定(ブードゥー・ゾンビ映画の脚本も書…

1/8『ノーマ・レイ』『アメリカ合衆国ハーラン郡』

マーティン・リット『ノーマ・レイ』。そもそもこれまで見ていなかったのがやや恥ずかしいかもしれないが、この機会に見れてよかった。紡績工場の組合作りのための集会を開けないか、ノーマが長年通ってきた教会の牧師へ頼むも(私、ここで懺悔もしたよね、…

1/7 『フェイクシェルター』覚書『Oxhide』バーバラ・ハマー初期作品集『アンニー可愛や』

1/7 年末上映した作品について原龍之介さん(『縺』監督というか法政大学Ⅱ部映画研究会の後輩です)がnoteに投稿されています。ありがとうございます。 note.com MK2のサイトにてリュウ・ジャイン監督・編集・撮影・出演『Oxhide』(牛皮)を見る。解説によれ…