阪本順治『一度も撃ってません』。年寄りのコメディかと油断して見たら堂々たるノワールであり、殺し屋映画であり、酔っぱらい映画であり、手が震え、本物じゃないと言われ、不意を衝かれる。『さらば愛しきアウトロー』というか、石橋蓮司主演作というよりも、先に死んでいった人々を弔うような映画。石橋蓮司の役は宍戸錠矢作俊彦のミックスに近いイメージ。桃井かおりはやっぱり全然好きになれない(神代『櫛の火』の桃井かおりも嫌い)が「違う女優がよかった」というわけではなく、やはりウザさ込みで「ここにいてもらうしかなかった」という感じ。
共謀罪!」であり、初っ端からマスク装着あり、佐藤浩市の「この冬で定年」であり、そう、「最後の冬」という感じが凄くある。この冬は越えられないかもしれない。で、コロナのあれこれでいまや熱中症の季節であるが、まだ冬は終わってないのか。日本の四季なんざ桜を見る会のように茶番でしかなくクソ食らえである。
もはやパロディでも何でもなく映画の夜の記憶の結晶であり、主観ショットの醍醐味あり(これが阪本順治と三作目の儀間眞悟)、気合が入っているかと思いきや、もうフィルムなのかケータイなのかもどうでもよくなるような微妙なストップモーションの不審な映像もある。