山形育弘脚本・七里圭監督&黒川幸則監督新作上映@キノコヤ

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山形には行けなかったが山形育弘脚本特集には遅れて行けた。どれも職探ししたりしなかったりでプラプラした時間を過ごす人々の話だが、特に『Unnamed Road』の、いま見ている世界と自分の望んでいる世界とのギャップがありながら、「こうあるしかないんだろうか」と曖昧に過ごす一見楽し気な時間が、観客としてはとにかく気持ちいい。
PFF以来の『川でギャー』(黒川幸則)は初見以上に感動した。「ワンピース」シリーズ番外編としてワンカット・固定という縛りの一本でありながら、一度にすべてを見聞きすることが不可能だと諦めさせる作品で、許されるなら続けて5回でも10回でも好きなだけ繰り返し見たくなる。それだけ役者たちの顔と声を隈なく見直したい。それはギャラリーでのエンドレスにループするモニターではなく、劇場の暗闇と大きさでこそ発揮される。
『Necktie』(七里圭)は一見すると七里圭作品で最も緩い、だからこそ(おそらく『眠り姫』以降)最も愛すべき一本。フラッシュバックと女二人のあれこれが展開される時の、いくらでも(たとえば『ツイン・ピークス the return』のように)膨張し続けそうな題材を、本当にどれほど時間をかけたのかわからないほど短く圧縮する七里監督の力技を堪能できる(その意味で本作も何度でも見直せる)。唐突な青空での特訓シーンがとても美しかった。それでいて喫茶店やバーのシーンはどこへ向かおうとしているのかわからない。山形育弘本人の顔が何度も映っては、なにか馬鹿にされているような気持ちになる。どのように味わえばいいかわからない……、このコメントしがたさこそ七里監督の持ち味なのかもしれない。