8日

せっかくの休みだし、久々にTOHOシネマズで映画を見ようと思ったが、見たいと思う映画が一本もない。どの予告編を見ても行こうという気がしない。

それでも『ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ』の二回目に行こうか悩んだが、結局行かなかった。真正面の一番見易い席から、もう一度見たら本気で中毒になりそうだが、これを誰かに良い映画だと言う気もわかない。男たちと演じ損ねたラブシーンをやり直しているような、妹とのカラオケはもう一度見たいけれど。この作家の映画では、ヒロインが歌いそうで歌わない印象がある。歌ではなく「踊り」があったのかもしれないが、それもたぶん『溺れるナイフ』でやめている。このあたりに非常にひっかかるところがあるのだが、うまく言葉にできず。

DVDにてフィル・カールソン『ベン』。次作『ウォーキングトール』は主役の顔がほぼ同じタイプで、この両目のちょっと離れた、幼さの抜けない顔つきに惹かれていたんだろうか。周囲で起きる暴力沙汰の渦中にいるからこそ、あの顔が中心にいるのか。彼の佇まいは風の吹く中、ネズミの隠れた箱を持ち歩き、その隣に警官がついていく時、ドキドキしつつも非常に愛しい光景になっている。フラー原作の『スキャンダル・シート』でも見た(それこそフラーの『クリムゾン・キモノ』など近い状況を見たことがあるような)野次馬たちというか、何を思っているのか読めないというより読む必要のない人々(顔たち)も初っ端から出てくる。少年は嘘をつく(嘘をつく主役も数本見たフィル・カールソンの共通点だ)。ここでの『月光』と刑事の電話がむちゃくちゃ良いけれど、そのときの少年の顔はワイズマン『少年裁判所』を見直したくなる。それを嘘と知った母のショックはさらに来るが。火炎放射器と水攻めに囲まれた姉弟といい、フーパーの映画のクライマックスのように見ていたけれど、最後の刑事たちのやり取り、ざらついた感じ、と言っていいのかわからないが、かなり良い。

続けてフィル・カールソン『荒馬サンダーホーフ』。ピューマ狩りの『荒原の死闘』のほうが好きだが(若者が猟銃を抱える姿は『ウォーキングトール』見舞いに来る息子に重ねられて泣かせる)、ここでは若者が先に死んで、その帽子を生き延びた老人が見下ろしている。また都会を知る人間が田舎に戻ってきた話であり、馬と人間、それぞれのカップルが元に戻る。そしてカップル同士がともに歩いて終わる。