『彼女はひとり』。誰かを「好き」や「嫌い」になることについての映画として濱口竜介監督の真正面からの切り返しや『不気味なものの肌に触れる』の川辺が引用されているけれど、もしもワークショップ的なアプローチによって詰められたやり取りであったならば掘り下げられたかもしれない題材が勿体なく感じた。男が女を好きなのは「優しいから」と口にする欺瞞も、比べるべきでないかもしれないけれどブニュエルの『エル』の「変ね、優しいなんて初めて言われた」という返しも含めてゾッとさせつつ笑える短いやり取りを思い出してしまって、圧倒的に物足りない。彼女たちの過去をめぐるサスペンスとしても、幽霊になる友人の自殺と、ヒロイン自らの自殺の関連性を考え始めると、映画が始まるまでに起こってしまった出来事たちをうまく扱いきれていないように思う。画像の「拡散」シーンが集団を演出することの困難さを露わにしてしまっているだけでなく、続く階段での向き合った男女の芝居まで、ノイジーな音楽を被せるより、たぶん意識しただろう『クーリンチェ』の吹奏楽のような同録で勝負したほうが、「拡散」された状況の演出としても、何らかのざわめきがあってよかった気がする。たぶんここに書いてしまった全部、やりたくて出来なかっただろう悔しさに満ちた諸々ゆえの選択による作品だと感じた。