ジャック・ターナー『ベルリン特急』が日本にはVHSしかないと思っていたら、いつの間にかDVDが出ていた(たいした画質ではないが問題なく見れたと思う)。感動する。たびたび出来事に対し四、五人の人物が数秒の間に立ったり座ったりしながら各々の態度を表明する時、題材がどうだろうと、見ていて一気に豊かな気分になる。誰かが極端に目立つわけではなく、彼らが別々の考えを持っているのに、同じ方向を目指さざるを得ない理由の深刻さの度合いも違うのに、彼らが協力をする。誘拐されるポール・ルーカス演じる教授が「ところがなんだ、君たちの間には信頼も友情も何もない」と、会話の流れとして何となくわかるがギョッとするタイミングで言うのだが、その声が跡を引いていると納得させることもできるが、この信頼も友情も何もないからこそいい。たぶん友情らしきものが芽生えるのだろうが、これは友情というよりも単に「情」なのかもしれない。放っておけない、無視できないというやつか。そして微妙な彼らの間の動き出す時間差がいい。正直『ジョジョ』の諸々を思い出した。彼らそのものより、間を行きかう煙草、一枚の紙が印象に残る。またはっきり言ってロバート・ライアンよりも、事態を好転させるために我が身を犠牲にして道化師に変装するドイツ人が泣かせる。