ジョン・ウィック チャプター2』には感動した。『ローガン』も『20センチュリー・ウーマン』も『夏の娘たち』も凄まじかったが、どれも最初からずっと良かった。でも『ジョン・ウィック~』は(別に我慢したわけでは全然ないが)最後まで見て感動した。今更だが映画を見て人物が何を考えているかとか、人物のやってきたことと自分とに重なるところがあるとか身につまされることもあるから感動もするけれど、この映画ではただただキアヌ・リーヴスに見惚れた。それほど、もしかするとガス・ヴァン・サントと組んだ時以来、最も美しい。映画の理想的な中心になっているんじゃないかと思う。そんな彼が取り返しの徹底してつかない領域に踏み込んでしまうとわかってはいても、もう止められないんだというシーンで、久々に誇張でも何でもなく泣いた。あとはもう彼とこの映画を見送るだけだ。
映画の人物が徹底的に取り返しのつかないことをしてしまうとわかってはいても観客は止められない。そしてその道行の少し前に時制が若干乱れるのは『ジャッキー・ブラウン』を見た時と個人的には通じ合う体験だった(明らかに狙いは違うとわかっているが)。浴槽における自殺も、バーカウンターでの殺し屋と交わす一杯も、鏡の間での標的が自らの顔を見るのも、抑制された演出と言っていいものでも何でもないけれど、次々と退場を余儀なくされる周囲の存在を人間らしい人間と思わせるほど掘り下げようと試みなくても忘れがたいものにする。ついにペン捌きの炸裂する瞬間、また終盤再びキアヌ・リーヴスの前に炎が現れた瞬間、震えた。