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ジェリー・ルイス『底抜け再就職も楽じゃない(HARDLY WORKING)』、アップされていたので見てしまう。

ドタバタを演じる彼と、時折見せる、いつになく落ち着いた演技とのギャップに戸惑う。これは序盤で道化師の職を失いメイクを落とすシーンよりも、むしろ彼が最初から道化師として登場するために生じる不和かもしれない。映画は時代ゆえに生じたのかわからない、また物語上の設定では職業として演じられたのか、彼自身の性格的な不安定さなのかも掴みがたい、「道化師」としての彼と周囲のズレを、再就職という主題で探っているように見えた。

バーテンダーの職に就けば、ダンサーの素足にたまらずしがみつき、仕事の終わりにビールを飲む。これまで自分が意識してなかっただけかもしれないが、どこか大人な欲望を彼が見せることも、あまりなかった気がする。ヒロインと電話の後、彼女が鏡の前に立つ演出は恋愛描写として色気に満ちている。電話の向こうでもルイスが鏡の前に立っているという切り返しも素敵だ(直後、髭剃りによるギャグを披露してくれるが)。

最初に自身のドタバタがショーとして演じられ、他の道化師たちの反応も映される。これまでルイスが周囲のリアクションを撮ってきたことにより生じる批評性を考えさせる。また料理人になった彼のデタラメな調理と、おそらく本職による手さばきが切り返されることも、あまり見なかった気がする。

ついに郵便配達の職を平然とこなす彼を映す一連のシーンを見ていて、たとえでも何でもなく涙が出た。終盤、群衆に囲まれることになる彼の姿を見て『マックス、モン・アムール』の凱旋を思い出し、さらに泣かせる。そこへめがけてヒロインが父親の運転する車のアクセルを踏み、あえてこの調和を突き破って、『モダン・タイムス』の先へと旅立っていく。

その後の『CRACKING UP』はルイスが死に場所を探しているような、それでいて同年の『キング・オブ・コメディ』と比べて「反時代的」という言葉のふさわしい映画と思いながら見たけれど、近いうちに見直したい。