『季節のはざまで』(ダニエル・シュミット)

ダニエル・シュミット『季節のはざまで』。オーディトリウム渋谷以来。どんだけ人を入れようが、がらんどうだろうが、カメラを動かそうが、エロい話になろうが(鍵穴のところなんか凄い)、精神病院に行こうが、全てにおいてちょうどいい距離を維持し続ける…

『ペナルティループ』(脚本・監督:荒木伸二)

前作『人数の町』は蓮實重彦がコメント寄せていたから気になって見た(安易な動機で申し訳ないです)。『人数の町』はなかなか面白かったけれどラストがどうなったか思い出せない。ただスッキリしない終わりだったように思う。『ペナルティループ』もかなり…

レニー・ハーリン『ブリックレイヤー』

レニー・ハーリン『ブリックレイヤー』を見る。仕事が忙しくなると「映画なんか見てる場合じゃない」と大半は後回しになるのに見てしまった。最終的には「見てる場合じゃない」映画かもしれないが悪くない。いや、本当はもっと良くも悪くも今つくられている…

フィリップ・ガレル『ある人形使い一家の肖像』

www.wowow.co.jp ルイ・ガレルがウディ・アレンの映画に出演したからと結びつけるのは短絡的だが、近作でのモノローグを用いながら男女関係の顛末を語るスタイルがアレンとガレルを意外と近づけているかもしれない(それ以上に異なる面を意識するべきだろう…

・国アカにて沖山秀子脚本・監督『グレープフルーツのような女』。序盤の雪山でのパンから何を見せられているんだと困惑するが、だんだんとヘンテコなエロ映画というより、役者の監督作として興味深くなってくる。彼が海外へ立つことが決まって、一人で我慢…

『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(監督:鎮西尚一 脚本:井川耕一郎)

鎮西尚一監督のフィルム上映に駆けつけないわけにはいかないと『女課長の生下着 あなたを絞りたい』を見にラピュタ阿佐ヶ谷へ久々に行く。冴島奈緒の役名は「小泉京子」、クレジットには「小沢健三」という役者の名前に94年らしさを感じる。舞台はほぼ窓際を…

サッシャ・ギトリ『トア』

劇中にてギトリは「政治には関心がない」「政治より演劇のほうが大事だ」と言うが、「政治も演劇も役者が交代していくのに変わりはない」と続き、「政治は演劇と同じだ」と話題に区切りをつける。作品全体の中で言えば脇道へ逸れたに等しいが、このような台…

『網目をとおる すんでいる』(清原惟)『手の中の声』(青石太郎)

scool.jp グループ上映会「発光ヵ所」の短編プログラムを見に行く。清原惟『網目をとおる すんでいる』(2018年)は5年ぶりくらいに見直したが、ほとんどどんな話をしていたか忘れていた。「住んでいる」と「澄んでいる」どちらともとれるタイトルと、川沿いに…

『すべての夜を思いだす』(清原惟)

予想していたよりもどう反応すればいいのか難しく、掴みどころがなく、壁のようなものを感じる。この捉えどころのなさを必要としている人々がいるのだろうと自分で言ってしまうと、本当にただ「興味が持てない」という酷な感想になってしまう。すれ違う人た…

サッシャ・ギトリ『ある正直者の人生』

サッシャ・ギトリ『ある正直者の人生』。ギトリの出番は前口上とモノローグ、ギトリ夫人のラナ・マルコーニは1シーンだけ。主演のミシェル・シモンはギトリからこのように頼まれる。「節約のために一人二役を引き受けてくれないか」ミシェル・シモンは二つ返…

『夜明けのすべて』(三宅唱)

三宅唱監督『夜明けのすべて』を見る。たとえ肯定的な意味であっても本作に対し「何も起きない」といった文言を読むと(またそれが男女関係に焦点を絞った上での話だとしても)少し驚く。そういえば三宅唱監督の映画は『やくたたず』を見たときから「何も起…

『瞳をとじて』(ビクトル・エリセ)

ビクトル・エリセ『瞳をとじて』。 すでに知ったふうに本作を過去作と比較して劣ると書く文を見かけたが(そんなものに目を通す方が時間の無駄か)、たとえばカラックスの『アネット』のラストが凄いのと同じく、本作もたしかに最初と最後こそ最も感動的かも…

『熱のあとに』

『熱のあとに』を見る。ある出来事を経験した「その後」を生きることから始まる映画ではあるが、それでも127分という時間が長すぎないかと苦痛にはなる。彼女が過去に男を刺したこと、そうした実際の事件を題材にした映画でありながら、観客として知っている…

2/11、12上映の『self and others』(監督:當間大輔)について

11日予約フォーム https://0211kinokoya.peatix.com/view 12日 https://0212kinokoya.peatix.com/view 『self and others』(監督:當間大輔)は今週末11日(日)・12日(月、祝)上映。 様々な例外はあり得るだろうが、基本的には映画は黙って見るほうがいい…

ウダイ・シャンカル『カルプナー』

blog.goo.ne.jp https://www.nfaj.go.jp/exhibition/cinema_ritrovato202312/ 国立映画アーカイブにてウダイ・シャンカル『カルプナー』を見る。カルプナーとはヒンディー語で「想像、空想」らしい。映画の冒頭には、本作が風変わりな空想物語であること、展…

野田真吉『冬の夜の神々の宴』『生者と死者のかよい路 -新野の盆おどり神送りの行事』『谷間の少女』『機関車小僧』@国立映画アーカイブ

ようやく国アカにて野田真吉特集。『冬の夜の神々の宴』は想像していたよりアヴァンギャルドというかヤバい映画というか『くずれる沼 あるいは画家・山下菊二』と近い印象(撮影も同じく長谷川元吉)で、まさに呪術と儀式を見ている。何の音声もなく冬の山村…

『STALKERS』(古澤健)

古澤健監督『STALKERS』。監督・主演と聞いて、古澤健監督がストーカーらしきことをやる自演映画かと失礼ながら思い込んでいた。内容はほぼトンネルを行って戻りかけるだけ。ある意味でベケット的か。そもそも随分長いこと古澤監督の映画を見なかったから、…

『カラオケ行こ!』など

そういや山下敦弘監督の映画を何年も見てないと思い『カラオケ行こ!』。一昨年なら『はい、泳げません』とか、カラオケ教室的な映画は何だかんだ気軽に見やすいし、実は監督の名前とか気にしないで向き合えるジャンルかもしれない。でも『カラオケ行こ!』…

「グランド・ツアー イタリア紀行・短篇集」「ヴィットリオ・デ・セータ短編集」

国アカにて「グランド・ツアー イタリア紀行・短篇集」ジャン・ルカ・ファリネッリが解説しながらの上映。どれもパンのし甲斐がありそうな光景。正直もっとちゃんとメモとって覚えておけばよかったくらい詳細を言えず残念だが、どれも面白く、どれも見ごたえ…

【告知】2/11、12 當間大輔監督『self and others』上映会

たびたびお世話になっています、聖蹟桜ヶ丘のキノコヤにて上映会を新谷和輝さんと企画しましたので、ご案内いたします。 メインビジュアルは當間大輔監督に作成いただきました(こちらの不手際によりPeatixにはフルで載せられず、監督には大変な失礼をしまし…

1/4『VORTEX』

ギャスパー・ノエ『VORTEX』。一部好評のため食わず嫌いのギャスパー・ノエをついに見る。これまたエラいモンを見てしまったという感想に尽きる。ドライヤー『吸血鬼』もやってるし。シュリンゲンズィーフなら『ボトロップの120日』を見たときの、映画から映…

12/31~1/3

・年末に腹を壊し酒を飲む気になれず。大晦日は微妙に調子悪く仕事終わりにどこにも行く気力わかず、でも話題の『窓ぎわのトットちゃん』(八鍬新之介)を見に行く。なぜか黒柳徹子の声をバックに始まる暗闇の冒頭から落ち着いた響きにもってかれる。正直黒…

『ショーイング・アップ』『ファースト・カウ』『サムサラ』

・ヒューマントラストシネマ有楽町の特集にてケリー・ライカート『ショーイング・アップ』。自分よりもっと繊細に語れる感性の方々がいるに違いないとか思いながらも、しみじみと感動する。傷ついた者の療養期間についての映画でもあって、その意味で清水宏…

年末の映画日記

・国立映画アーカイブにて『月夜鴉』(39年 監督:井上金太郎)木下千花さんの講演付き、『名人長次彫』(43年 監督:萩原遼)。『月夜鴉』恋敵もいる神社にて実質結ばれる長回しがおかしさと切実さの塩梅が良くて、それからの裾が汚れるたびに慌てて拭く仕…

2023年の映画

たぶん見た順。コンパートメント No.6(ユホ・クオスマネン) フェイブルマンズ(スティーブン・スピルバーグ) ※イスラエルによるガザでの虐殺と、それを監督が支持した点をふまえても、今年見た中で忘れがたい一本ではある アルマゲドン・タイム ある日々…

『遺灰は語る』『栗の森のものがたり』『スラムドッグス』『首』

先日、パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』をようやく早稲田松竹にて。 列車の旅の映画なら最近だと『コンパートメントNo.6』が良かったけど、本作の何だかんだ物言わぬ骨壷の旅は列車、車内と久々に映画館の暗さに浸る感覚。冒頭の白髪になっていく子たちは…

『きのう生まれたわけじゃない』(福間健二)

kino.brighthorse-film.com 福間健二監督・原案・脚本・出演・音楽の『きのう生まれたわけじゃない』を見る。良い映画か、面白い映画かはともかく、新作ができたら見に行ってしまう。映画の大半がそうだというわけでもなく、むしろよくわかってないギャラリ…

『フォルティーニ シナイの犬たち』

アテネ・フランセ文化センターにてストローブ=ユイレ『フォルティーニ シナイの犬たち』。イスラエル・パレスチナをめぐる映画として、いま見直すべき一本だという気合を会場から感じた気がする(しかしデモには行けず)。最初の第三次中東戦争のニュースに…

『あずきと雨』(監督:隈元博樹、脚本:久保寺晃一)

www.bota-film.com 『あずきと雨』(監督:隈元博樹、脚本:久保寺晃一)を見る。『Sugar Baby』(監督・主演:隈元博樹)が里帰り映画なら、こちらは家出映画か。この男女が同じことを繰り返しているのか、彼がいよいよ来た終わりの予感に狂って、あずきバ…

『コカイン・ベア』『絶望の日』『女体』『蕨野行』『淑女と髭』『突貫小僧』『東京の合唱』『ザ・キラー』『ドミノ』『烈火青春』

仕事終わりに終電前の新宿でエリザベス・バンクス『コカイン・ベア』を見る。昨今話題のクマさん出没だけでなく、微妙に埼玉県自民党県議団による虐待禁止条例改正案を思い出す話も出てきた。クマに罪はないんやで、という映画であり、罪のない人も死にます…