『WATER MARK』(中川ゆかり)@海に浮かぶ映画館

船に乗せられた人々についての舞台。客席と舞台を共有する揺れと寒さについて、「寒くないですか」と聞き続ける。「寒くないですか」という言葉が視点を切り替え、役者が羽織ることになる衣裳が床に、まるですでに脱ぎ捨てられていたかのように落ちているこ…

『ある惑星の散文』(深田隆之)@海に浮かぶ映画館

umi-theater.jimdo.com www.youtube.com これほど船に乗って見るために作られた映画はないと思う。深田監督は自らの作品の上映に最もふさわしい場所を知り尽くした戦略家なのかもしれない。だがそんな狙いだけじゃなく、作品のそこかしこに見え隠れする別の…

『南瓜とマヨネーズ』は『亀虫』や『シャーリー』のような連作の中・短編のようにも見えて、そこが良かった。別にリンチのように語り切るのを断ち切っていくわけではなくて、男女が別の映画の人物になってしまったかのように変わって見える。そう書くと『ロ…

中川信夫『影法師捕物帖』、西部劇、ソ連映画、ドイツ表現主義をワンカットごとに横断し、アラカンが田沼意次に刀を突き付けては何事もなかったかのように次の場面へ移って、また田沼に説教を繰り返し、どっから屋敷へ入ってきたかわからない相方がインして…

北島敬三のポートレイトに引き込まれた。撮られたのがどんな人なのかどころか、撮ったのかが誰なのか、いつ撮られたのか、などなど様々な情報が一掃されて背景が見えなくなって初めて、わずか3,4点の写真が強度を発揮する。そして3、4枚のショットの間を隔て…

レニー・ハーリンの『スキップ・トレース』、かなり良かった。初っ端の相棒が殺されるまでは「あ、これ乗り物酔いみたくなるやつだ……」と嫌な予感までしたけれど、すぐ後のドミノ式に倒れる水上家屋といい(ブラジャーが良い)、ボウラー兼ターミネーター率…

『新感染』見た。やっぱり列車とか移動の限定された細道でのアクションとかは盛り上がる。しかし『カーズ』三作目とか『トイ・ストーリー』とか見て思った、別に良く出来た映画(伏線を回収してくれるとか、「道徳的」というか良き人間像を示してくれるとか…

ジャック・ターナー『ベルリン特急』が日本にはVHSしかないと思っていたら、いつの間にかDVDが出ていた(たいした画質ではないが問題なく見れたと思う)。感動する。たびたび出来事に対し四、五人の人物が数秒の間に立ったり座ったりしながら各々の態度を表…

ツイ・ハーク『西遊記2』。初っ端から見世物小屋そのものとしか言いようのない悪夢のような世界(ホドロフスキーか石井輝男かという領域)がCGの有無関係なく繰り広げられる。しかし見世物小屋商売をやっている妖怪三人組と三蔵と小人とのふざけているという…

小田香『鉱』パンフレット、監督自身の言葉はもちろんだとして、小森はるか監督の文章が素晴らしかった。特に何か映画の理解の深まる情報が載っているわけではなく、むしろ映画の情報のなさを肯定しながら、映画との距離を一気に縮めてくれる。映画の撮れた…

ウリ・ロメル『Prozzie』。少女は母親が男を連れ込むのを鍵穴越しに見た。そして男が逆上し母を叩き死に追いやるのを見た。『ハロウィン』と同様の形式を辿るのかと思う。たしかに途中までは成長した彼女がサングラスとブーツによって人格を変え、誘い込んだ…

豊田四郎は昨年『若い人』を見て(新文芸坐見逃したから悔しくてネットで見てしまったが、いま調べたらもう消えていた)、文字通り「若い」映画なので、ここから豊田四郎も始まったんだと感動した。カメラのアングルとか、音がなければわからない映画を撮っ…

キアロスタミ『24フレーム』、24コマの1秒を2時間近くに引き伸ばした映画、というより4分30秒近い1フレームたち。その意味で『ホーリーモーターズ』と近い観点に立っている気がする。自動車の映画を撮り続けた作家にふさわしいのかもしれない。主に動物たち…

『きみなしで生きてみよう』(11/10)

www.youtube.com balladstokyo.wixsite.com 須賀彬太・統原直樹、そして『蘇州の猫』の内田雅章SVによる『きみなしで生きてみよう』と「中原昌也の白紙委任状」の時期が重なっているのは重要かもしれない。どちらもが徹底的に「キワモノ企画」の精神を持って…

『戦争と一人の女』(11/5 横浜)

awomanandwar.jimdo.com 無事に終演いたしました - 戦争と一人の女【舞台】 東京での公演とは別物だった。演出家も役者も坂口安吾を読んだ回数が増えて、何か文章にうんざりしているのかもしれないくらいになっている。しかし四者四様の輝きを放つ「女郎」た…

『LOCO DD』、ドキュメンタリーとドラマのパートが、それが事故によって分裂する田中要次篇、確信犯的に引き裂く島田元篇に対して、やっぱり双方が映画の演出によって結ばれている大工原正樹・FantaRhyme篇が素晴らしかった。初めて『痴漢白書8』を見て、諏…

小森はるか+瀬尾夏美『にじむ風景/声の辿り』は瀬尾夏美による物語『二重のまち』の陸前高田の人々による朗読であって、これまで以上に劇映画とドキュメンタリー映画の境界がにじんでいるともいえる……。テクストと朗読する人々との関係が不思議だ。その人た…

『わたしたちの家』(清原惟)

急に娘が母親にじゃんけん勝負を提案する。どちらか勝ったほうの家になって、負けたほうは出ていかなければならない、と言って娘は即座に始める。しかし切り返すとパーを出した母が「勝った」と自ら広げた手を見ている。「セリの負けだよ、どうするの。」一…

『ツインピークス』はビヨンドでなくリターンなのだ。誰が言ったか知らないが『ロストハイウェイ』の「リンチ・イズ・バック」という煽り文句が脳裏をよぎる。下手したら、また彼はいつの間にか私を置いていってしまうかもしれない。定住できずに作品を残し…

スクリーンで見るのは初めてじゃないのに、『天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝』、ひたすら見ていて気持ちよかった。眼が喜んでいる気さえした。『製茶工場』の後半はただただテンションが上がってやはりほとんど覚えられなかったが、どんどん画が音が…

誰もが言うことだけれど『草叢』は『宙ぶらりん』の美しい出発を画にするカーテン、鏡、そして自転車が引き継がれる。しかし自転車は姿を消す。これも誰もが言うことだけれど自転車はジョン・フォードの馬のように、生き物であって時に飼い主の意思と関係な…

堀禎一監督特集@ポレポレ東中野、処女長編『宙ぶらりん』の上映がもう終了しているのは残念だけれど、それでも今日、明日の「天竜区」シリーズから一週間だけでも充分すぎるほど凄まじい。ほぼ二人だけでつくられた「天竜区」。ただただパワフル。後半ひた…

『ジョン・ウィック チャプター2』には感動した。『ローガン』も『20センチュリー・ウーマン』も『夏の娘たち』も凄まじかったが、どれも最初からずっと良かった。でも『ジョン・ウィック~』は(別に我慢したわけでは全然ないが)最後まで見て感動した。今…

中原昌也個展@WAITINGROOMコラージュ、絵の具の盛られた量は激しく、告知WEBやアルバムのジャケットだけで感じ取れるわけがなく、意味のない比較をすればゴッホを日本の美術館で見るよりかショックを受けた。それは糞ではなく、イッてる女性の喘ぐ顔、乳房…

「世界に杭を打つ 上映会vol.1」へ。 三浦翔『ラジオ・モンタージュ』は、タイトル通りといえばタイトル通りの映画になっている。正しく「切り返し」についての映画。その切れ味だけでいえば『親密さ』より遥かに、誇張して言えば初期ファロッキ見た時のよう…

4/30の夜勤明けはアドルフ・ヴェルフリと斎藤大地特集にした。本当は小田香特集にしたほうがよかったのかもしれないが、行いが悪いからか記憶から消えてしまった。やはりヴェルフリだけでなく小田香も見たほうがより充実できたかもしれないがヴェルフリと斎…

中川信夫『紀州の暴れん坊』を遅い松方弘樹追悼のついでに見たが、『三四郎』とならぶ青春映画だった。そしてまたもホイット・スティルマンとアイヴァン・パッサーがよぎった。石川啄木や天一坊のように、吉宗を題材に愛すべき人々の行き交う、そして若き日…

そうは言っても真に清順の言葉を形にしているのは清順の映画だと『暗黒の旅券』で思い知った。まあ、勘違い、思い込みばかりで無茶苦茶書くくらいしか自分には脳がないので、清順の発言のほぼほぼ何一つ瀬田なつきの映画には当てはまらないとわかって書いて…

夜勤明けのため正直字幕がうまく頭に入らなかったがシャンタル・アケルマンもまた『No home movie』で、一周して若返る境地に達していたと思う。カメラを持つ手が震えようが、フレームが四角いということと同じくらい、映画は揺るがない。二階から見下ろす先…

瀬田なつき『PARKS』、やはり良かった。死者が絡むとグンと響く。明らかに条件が悪くて駄作になってる吸血鬼のTVドラマもみーくんまーちゃんも死者が絡んできそうなスレスレで寸止めになる。そのこと自体、映画が真に死者と絡もうとすると諸々の圧力を受ける…